日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子納本」の意味・わかりやすい解説
電子納本
でんしのうほん
紙の書籍や雑誌と同じように、書籍や雑誌などの電子データを国立国会図書館へ納める制度。2010年(平成22)6月、国立国会図書館長の諮問機関である納本制度審議会が電子情報の急速な普及で「文化財の蓄積及びその利用」という国会図書館の役割を紙の書籍などの納本だけでは維持できないおそれがあると、電子納本制度の必要性を答申した。政府は2012年6月に「国立国会図書館法」を改正し、インターネットなどで提供される電子書籍、電子雑誌、電子コミックなどのうち、無償でDRM(デジタル著作権管理)のないものに限定して電子納本が2013年7月から始まった。ブログやツイッターなどの簡易なコンテンツは対象外である。紙の書籍などの納本は義務化されており、納本しなかった場合に過料を科されることもあるが、電子納本は罰則を設けず、発行者に自主的に電子データを送ってもらう形式をとる。送信費は国が発行者へ代償金として支払う。
アメリカ、ドイツなどでも電子納本が始まり、中国、韓国、シンガポールなども電子図書館の構築を国家戦略に掲げている。日本では2007年、元京都大学総長で情報工学者の長尾真(まこと)(1936―2021)が国立国会図書館長に就任(2012年まで)して以来、積極的に書籍のデジタル化に取り組み、2010年4月には、先行して、国や地方公共団体の発行する電子データの納本義務化が始まった。
なお、電子納本された電子データは、インターネット上に公開されている「国立国会図書館デジタルコレクション」で閲覧することができる。
[野口武悟 2021年1月21日]