日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
青少年の雇用の促進等に関する法律
せいしょうねんのこようのそくしんとうにかんするほうりつ
若者に過酷な労働を強いる、いわゆるブラック企業を労働市場から排除し、若者の就職先での定着率向上を促す法律。1970年(昭和45)に成立した勤労青少年福祉法(昭和45年法律第98号)を改正し、名称を「青少年の雇用の促進等に関する法律」に変えて、2015年(平成27)10月から順次施行した。略して「若者雇用促進法」「青少年雇用促進法」などとよばれる。厚生労働省の2013年調査では、大学卒業者の約3割、高校卒業者の約4割が就職後3年以内に仕事を辞めているため、同法は国や地方自治体に「適職の選択を可能とする環境の整備、職業能力の開発及びその他福祉の増進を図るために必要な施策」(第5条)を推進するよう努めなければならないと規定。新卒予定者らの求めに応じ、民間企業に、職場情報の積極的な提供を努力義務とした(第13条)。具体的には、(1)「3年以内の離職者数」や「平均勤続年数」などの募集・採用に関する状況、(2)「所定外労働(残業)時間」や「有給休暇の取得実績」など雇用管理に関する状況、(3)「研修」や「自己啓発支援制度」の有無など職業能力の開発・向上に関する状況、の3類型ごとに一つ以上の情報開示を義務づけた。またブラック企業を労働市場から排除するため、長時間労働や賃金不払いなど労働法規(労働基準法、最低賃金法など)違反で年間2回以上是正勧告を受けたり、書類送検されたりした企業の求人を公共職業安定所(ハローワーク)で一定期間受け付けないことを明記(第11条)。民間の就職情報サイトなどにもブラック企業の求人を載せないよう求めた。若者の採用や人材育成に積極的な中小企業を「ユースエール認定企業」として認定する制度を導入し、公的助成や低利融資を受けられるようにした(第15条)。
[矢野 武 2017年8月21日]