非金属介在物(読み)ひきんぞくかいざいぶつ(その他表記)nonmetallic inclusion

改訂新版 世界大百科事典 「非金属介在物」の意味・わかりやすい解説

非金属介在物 (ひきんぞくかいざいぶつ)
nonmetallic inclusion

金属材料の内部に存在する酸化物,硫化物などの非金属物質を意味する。とくに鉄鋼材料では製造条件に応じて多種多様の介在物を生ずるので,その種類,形態寸法などの制御が重要な技術的課題の一つとなる。このため一般に非金属介在物というときには鋼材のそれをさすことが多い。炭化物,窒化物,金属間化合物などは熱処理によって固溶させたり析出させたりすることが容易であるので,一般には鋼中析出物と呼んで非金属介在物と区別するが,両者境目は明確ではない。鋼材の延性,靱性(じんせい),耐疲労性,耐食性,耐水素誘起割れ性,耐摩耗性などに悪い影響を与えるので,快削鋼などの特殊な用途を除いてなるべく少ないことが望ましい。通常の鋼材では体積比で0.1%程度含有しているが,その存在量を大幅に低下させたものはとくに清浄鋼と呼ばれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「非金属介在物」の解説

非金属介在物
ヒキンゾクカイザイブツ
non-metallic inclusion, slag inclusion

はがね(鋼)のなかに混入している酸化物,硫化物,窒化物,炭化物,およびそれらの混合物の総称.酸化物系介在物のうち鋼の性質にとくに有害なものは,直径1 mm 以上の巨大介在物やクラスター状介在物であって,均一に分布する微小介在物は無害である場合が多い.有害な介在物の組成は,マンガンシリケート,アルミナ,鉄アルミナシリケートなどで,その成因は,おもに鋳造中における鋼の空気酸化,取鍋ストッパーなどの耐火物の混入,およびこれらの複合作用と考えられている.その減少対策としては,高温鋳込みや押湯部の加熱などによって,浮上分離をはかることが有効とされている.硫化物系介在物の主成分はMnSである.これは圧延工程で細長く伸ばされるので,圧延方向と直角方向の機械的性質を大いに劣化させる.Ti,Ceを添加するか,拡散焼なましをするかして,硫化物を球状化すれば,その影響を減少させることができる.窒化物系,および炭化物系介在物はおもにAl,Ti,Zr,Vなどの特殊元素が入っているときに現れ,疲労特性やクリープ特性を劣化させる場合がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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