炭素と,より陽性な元素との化合物.相手の元素により,イオン性炭化物,共有結合性炭化物,侵入型炭化物に分類される.【Ⅰ】イオン性炭化物:陽性が強い元素とのイオン性の塩.炭化物イオン C22- をもつイオン結晶,またはそれに近い構造で,水や希酸で分解されて,炭化水素を発生する.Mg2C3は,CH3-C≡CHを生じる.
Al4C3 + 12H2O → 3CH4 + 4Al(OH)3
CaC2 + 2H2O → C2H2 + Ca(OH)2
Mg2C3 + 4H2O → 2Mg(OH)2 + CH3-C≡CH
希土類の炭化物MC2(M = La,Ce,Pr,Nd,Sm,Th,Uなど)では,C2H2のほかにCH4,C2H4,H2 なども生じる.CaC2は石灰窒素肥料の原料として重要である.【Ⅱ】共有結合性炭化物:非金属との共有結合性化合物.SiC,B4Cなど,安定で,融点が高く,硬いものが多い.ただし,炭化水素は例外である.SiC,B4Cは研磨剤に使われる.【Ⅲ】侵入型炭化物:原子半径の大きい元素との侵入型化合物.遷移金属の炭化物に多く,金属の最密充填構造の格子間にCが入ったもの.不定比化合物になる場合もある.不透明で金属光沢があり,電気伝導性のものが多い.金属の原子半径が約1.4 Å 以上の場合(Vは例外でやや小さい)にはMC(M = Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,W,Moなど),またはMC2(M = V,Ta,Mo,Wなど)になり,いずれも安定で,融点が高く,硬い.高い硬度と化学的安定性から,重要な機械・工具材料である.金属の原子半径が約1.4 Å 以下の場合には,金属格子がややひずんだものもあり,M3C(M = Mn,Fe,Co,Niなど),またはM3C2(M = Cr)などになる.逆に,グラファイトの層間にアルカリ金属原子が入った,MC8,MC16などの侵入型化合物もある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
陽性元素と炭素との化合物の総称。カーバイドともいう。一般に陽性の強い元素では塩型炭化物、陽性が弱い元素では、原子半径が小さいとき共有性炭化物、大きいときは侵入型炭化物となる。
塩型炭化物は、イオン性で、水および希酸で分解することが多い。C4-、C22-、C34-などから誘導されたものと考えられ、とくにC22-のときにはアセチリドといっている。C4-では加水分解してメタンを生ずる。たとえば
Al4C3+12H2O
→3CH4+4Al(OH)3
である。C22-はアセチリドで、[C≡C]2-を含み、加水分解するとアセチレンを生ずる。たとえば
CaC2+2H2O
→Ca(OH)2+C2H2
である。Cu、Ag、Hgの塩は爆発性。C34-は加水分解するとCH3C≡CHを生ずるのでアリリドともいわれる。希土類元素、ウランなどの炭化物では各種の炭化水素や水素を生成する複雑な加水分解をする。層状のグラファイト構造の間に金属原子が挿(はさ)まれた挿入(そうにゅう)化合物のMC8,MC16,MC32(MはNa、K、Rb、Csなど)も塩型であるとされている。
共有性炭化物は、一般に炭化水素のような独立した共有性分子をつくるものと、巨大分子のSiC,B4Cなど化学的にきわめて安定な化合物がある。
侵入型炭化物は不透明、金属光沢があり、電気伝導性がある。金属原子の格子の間に炭素原子が入り込んだいわゆる侵入型構造をもっている。
[中原勝儼]
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