旋盤をはじめとする切削工作機械での作業性をよくするために,成分および組織を調整した鋼。切削工程では,切りくずが細かく切れて飛ぶことが,切削工具に作用する力や,切削工具の摩耗の低減に結びつく。また切削加工をうけた製品の表面も,切削中に切りくずが細かく切れて飛ぶ状況で加工されたほうが美しく仕上がる。このような切削状況をつくり出す鋼の性質を快削性といい,この性質を高めるために成分調整をして快削鋼がつくられている。快削性を上昇させるために添加される合金元素にはマンガンMn+硫黄S,鉛Pbなどがあり,それぞれの合金は硫黄快削鋼,鉛快削鋼と呼ばれている。ほかにセレンSeやテルルTeなどの元素も使用されることがある。古くから用いられてきた硫黄快削鋼も,工作機械の速度上昇に伴い,その効果が疑問視されるようになり,高速切削における快削性の向上は今日の課題となっている。Teを含む快削鋼を切削中に観察すると,マトリックス(金属の地)中に分散したTeが応力の作用のもとに流動して材料の切削表面に出て材料を被覆し,高速切削の際のよい潤滑皮膜を形成して快削性を向上させている例も見いだされている。これは切りくずを細かく切って飛散させることとあわせて,快削性向上のもう一つの要因と考えられ,とくに高速切削の際には重要な機構であろうと思われる。
執筆者:木原 諄二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
被削性(削られやすさ)を有効に高める元素を添加した鋼.自動工作機械で連続高速切削を行うのに不可欠の鋼材で,各種の構造用鋼,工具鋼,ステンレス鋼などにS,Pb,Se,Teなどを添加した鋼種が実用されている.Sを通常の数倍の0.10~0.25質量% に高め,同時にMnを約1質量% 添加した鋼は硫黄快削鋼とよばれる.これは柔らかくてもろいが,結晶粒が熱間圧延の方向に伸びて微細に分布し,削りくずが破砕しやすく,すぐれた被削性を示し,もっとも古くから広く利用されている.Pbを0.1~0.2質量% 添加した鉛快削鋼はPbが鋼中に固溶せず,2~3 μm の微細な粒状で分布し,主として潤滑効果で工具の摩耗を防いで快削性を改善する.機械的性質を劣化せず強度を重視する機械部品にも利用できるが,鉛公害が問題となって高級鋼以外の利用は減少している.PbとSを組み合わせ,あるいはさらにTeを組み合わせた鋼もあり,また溶鋼にCa脱酸を行って被削性を高めたものはCa快削鋼または脱酸調整鋼とよばれている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
工作機械による被削性を高める成分を配合した鋼。もっとも一般的に用いられている快削鋼は約1%の硫化マンガンMnSを微細に分散させた硫黄(いおう)快削鋼である。0.1~0.25%の鉛を微細に分散させたものを鉛快削鋼という。硫黄快削鋼は鍛錬方向に硫化マンガンが伸ばされ、これと直角方向の靭(じん)性は低いが、鉛快削鋼にはこのようなことはない。反面、鉛公害の問題がある。被削性は、切りくずが短く破断しやすいこと、工具に対する抵抗が小さいこと、刃物を損傷させないこと、切削面が美しいことなどで評価される。自動工作機械には不可欠の鋼材である。
炭素鋼、構造用鋼、工具鋼、ステンレス鋼などに硫黄、鉛のほかセレンやテルル、カルシウムなどを配合した快削鋼がある。
[須藤 一]
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