改訂新版 世界大百科事典 「類船集」の意味・わかりやすい解説
類船集 (るいせんしゅう)
俳諧付合(つけあい)語集。梅盛(ばいせい)著。1676年(延宝4)刊。見出し語2700余をいろは順に配列し,語の下に付合語を列挙,ほとんどの項目に説明文を付している。たとえば,〈狩衣〉には〈行平帰洛,舞姫,猿楽,神子,やすらひ花,禰宜(ねぎ),杜若(かきつばた)の能,白拍子,蛇〉の付合語が挙げられ,さらに〈狩衣のすそをきりて歌をかきてやるとなり。頼朝の富士のゝ供(とも)はみなかりぎぬ也。とうとうたらりとうたふは太夫狩衣を着する也。芹川の行幸にすりかりぎぬの袂に書付けるは,人なとかめそと詠じたり〉と,見出し語に関連して必要な《伊勢物語》や〈富士の巻狩〉〈式三番〉等の知識が補記されている。この種のいろは別付合用語集には,1645年(正保2)刊の重頼編《毛吹草(けふきぐさ)》巻三,56年(明暦2)刊の皆虚(かいきよ)編《世話焼草(せわやきぐさ)》巻三,62年(寛文2)刊の是誰(これたれ)著《初本結(はつもとゆい)》があり,人々に便益を与えてきたが,さらに豊かな語彙(ごい)集が求められ,69年梅盛は《便船(びんせん)集》を編んだ。《類船集》はその改訂増補版で,時代の好尚を反映して通俗的な語彙が増加している。貞門・談林のような親句(しんく)の俳諧では,これは便利この上もない付合語辞典であった。
執筆者:乾 裕幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報