神職の名称の一つで,神職の総称としても用いる。もっぱら,祭祀に従事する。伊勢神宮では,祭主,大宮司,少宮司の下に禰宜を置いた。その起源については荒木田(あらきだ)神主などの遠祖である天見通命がはじめて補任されたとする(《皇太神宮儀式帳》)。その定員は《延喜式》では内宮・外宮各1員と定めているが,その後逐次増員されて,1304年(嘉元2)以降10員となり現在に至っている。10員の禰宜は,その任叙の次第によって一禰宜,二禰宜などあるいは一神主,二神主などと呼ばれ,第一の者を長官(ちようがん)と称した。中世以降,神領の退転とともに大神宮司の行政力が弱まると同時に,長官の権能が増大し,神宮いっさいの事務および祭祀を管掌した。両宮の禰宜には,古くは荒木田神主(荒木田氏),根木(ねぎ)神主,度会(わたらい)神主(度会氏)の3姓のものを任用してきたが,根木神主が絶えたため,中世以降皇大神宮は荒木田,豊受大神宮は度会姓のものが補任されることとなった。近世以降はその直系に限り,正員禰宜の神宮家(重代家)は荒木田姓では沢田,井面(いのも),薗田,中川,世木(せぎ),佐八(そうち),藤波などがあり,度会姓では檜垣,松木,久志本,佐久目,河崎,宮後(みやじり)などの諸家から補任された。神宮以外の諸社においても禰宜がおかれ,ことに香取・鹿島両宮では〈大禰宜〉の名称もみえる。また,諸国の小社では,女性を禰宜としたことも一時期あった。明治維新以降は,神宮および官国幣社に禰宜職がおかれた。神宮の場合は奏任官,官国幣社では各社1員とし,判任官待遇で,地方長官に任命され宮司(権宮司)の指揮監督を受け,祭儀および庶務に従事した。戦後は,官国幣社の制度が廃止されたが,全国の神社を包括する神社本庁において,神社に宮司,権宮司,禰宜,権禰宜をおくことができると定めている。
執筆者:茂木 貞純
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神社に奉仕する神職の総称。禰宜という語は「労(ね)ぐ」が名詞化したもので、神意を慰めるという義。神を祭り、神に祈(ね)ぐ(祈願)ことをつかさどる職業。古くは神主と祝(はふり)の中間に位置したが、現在の神職制によれば、禰宜は宮司(ぐうじ)・権(ごん)宮司の下、権禰宜の上に位置する。禰宜を初めて置いたのは神宮であり、大宮司の下に10人(現在は12人)置かれ、中世以降は荒木田(あらきだ)氏(内宮(ないくう))と度会(わたらい)氏(外宮(げくう))が世襲した。著名な大社にはたいてい禰宜が置かれ、その上首を長官(神宮)・大(おお)禰宜(鹿島(かしま)神宮)などと称した。宇佐(うさ)神宮には女禰宜もいた。
[三橋 健]
神主の下,祝(はふり)の上に位置する神職。神職全体の総称として用いることもある。伊勢神宮では宮司の下で神事を勤め,内宮は荒木田氏,外宮は度会(わたらい)氏を補任した。中世には神宮領の支配機構の一部として禰宜庁を構成,東国での御厨(みくりや)の支配を考えるうえで重要な存在である。正禰宜と権禰宜にわけられ,家格の固定化の傾向があった。正禰宜の定員はしだいに増え,14世紀には10人とされた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…本法度は5ヵ条からなっている。第1条は〈諸社の禰宜,神主などはもっぱら神祇道を学び,神体を崇敬し,神事祭礼をつとめること〉,第2条は〈社家が位階を受ける場合,朝廷に執奏する公家(寺社伝奏)が前々よりある場合は,これまでどおりとする〉,第3条は〈無位の社人は白張を着すように。白張以外の装束(狩衣など)を着けるときは吉田家の許状を受けること〉,第4条は〈神領はいっさい売買しても質に入れてもいけない〉,第5条は〈神社は小破のときに修理を加えて維持につとめ,掃除を怠らないように〉という内容であった。…
…神祇官には,伯(長官),大・少副(次官)をはじめ,大・少祐,大・少史および神部(かんべ),卜部(うらべ)がおり,そのほかにも御巫(みかんなぎ)などがいた。伊勢神宮では,古来,祭主(さいしゆ),大宮司,少宮司,禰宜(ねぎ)などの職称があった。諸社では,神主(かんぬし),祝部(はふりべ),宮司,禰宜などの語が一般に用いられた。…
※「禰宜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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