デジタル大辞泉
「舞姫」の意味・読み・例文・類語
ぶ‐き【舞▽姫】
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まい‐ひめまひ‥【舞姫】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「まいびめ」とも ) 舞を舞う女、少女。特に五節(ごせち)の舞を舞う少女、男舞、白拍子、現代では、バレリーナなどをもいう。まいおとめ。まいおんな。ぶき。→五節の舞姫。
- [初出の実例]「まひひめは、すけまさのむまのかみのむすめ」(出典:枕草子(10C終)九〇)
- [ 2 ] 小説。森鴎外著。明治二三年(一八九〇)発表。ベルリンを舞台に、留学生太田豊太郎と踊り子エリスとの愛とその挫折の物語を通して、明治の青年の自我のめざめとその魂の苦悩が描かれる。清新な雅文体で書かれ、浪漫的香気が高い。
ぶ‐き【舞姫】
- 〘 名詞 〙 =ぶぎ(舞妓)
- [初出の実例]「米国のピツポドロムの舞姫(ブキ)を見るやうな軽浮な感を生ぜしめたのは」(出典:欧米印象記(1910)〈中村春雨〉大陸旅行日記・一一月一〇日)
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舞姫
まいひめ
森鴎外(おうがい)の短編小説。1890年(明治23)1月、『国民之友』に発表。処女作。92年7月、春陽堂刊の『美奈和(みなわ)集』に収録。ベルリンに留学した、日本の若きエリート官僚太田豊太郎(とよたろう)は、そこで、自由と自我に目覚め、薄幸の踊り子エリスと恋仲になるが、そのために免官となる。やがて、親友相沢の計らいで、来独の日本高官に従って帰国できることとなるが、そのためにはエリスを捨てねばならず、事情を知った妊娠中のエリスは精神に異常をきたしてしまう。鴎外創始の流麗な雅文体で書かれた、浪漫(ろうまん)的香気の高い作品で、日本近代の黎明(れいめい)期における自我の苦悩をつづった問題作である。1888年、鴎外の帰国を追って来日した、エリーゼというドイツ女性があり、自伝的要素の強い作品である。
[磯貝英夫]
『『舞姫・うたかたの記』(岩波文庫・角川文庫)』
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舞姫 (まいひめ)
森鷗外の短編小説。1890年(明治23)1月《国民之友》に発表。東大法科出身の官吏太田豊太郎は法律研究のためベルリン大学に留学したが,仲間の讒言(ざんげん)で免官になり,貧しく美しい踊り子エリスと同棲する。しかし,ベルリンを訪れた天方伯と随行の友人相沢謙吉から帰国をすすめられたとき,生来の性格の弱さゆえに拒みきれず,発狂したエリスを残して帰国の船に乗る。鷗外自身に,ドイツ留学から帰国後,ドイツ女性が後を追って来日した事実があり,ドイツ体験の深層を虚構化したと目される問題作。太田の手記の形で知識人の内面の矛盾を描き,文体も文語体を基調に清新な近代性をそなえる。当時の水準を超えた傑作。
執筆者:三好 行雄
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舞姫【まいひめ】
森鴎外の短編小説。1890年徳富蘇峰の依頼を受け《国民之友》に発表。1884年から4年間,ドイツへ医学を学ぶために留学した体験を下敷きに執筆された。法律研究のためベルリン大学に留学した官吏太田豊太郎は美しい踊り子エリスと出会い,心を奪われる。その後,豊太郎はエリスと同棲し,エリスは豊太郎の子を身篭る。友人の相沢謙吉から帰国をすすめられ,豊太郎の帰国を心配して発狂するエリスを残して,後ろ髪を引かれつつ,帰国の船に乗ることになる。太田の手記の形で知識人の内面の矛盾を描き,文体も文語体を基調に清新な近代性をそなえる。豊太郎は鴎外自身とされている。
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舞姫
まいひめ
森鴎外の短編小説。 1890年発表。ベルリンを舞台に,日本の若い官吏と可憐な踊り子との悲恋を描く。作者のドイツ留学を記念する処女小説。清新な文脈をちりばめた雅文体でロマンの香気を漂わせ,鴎外文学の基底をなす作品となった。
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舞姫〔映画:1989年〕
1989年公開の日本映画。監督・脚本:篠田正浩、原作:森鴎外による同名小説、脚本:田村孟、ハンス・ボルゲルト。出演:郷ひろみ、リザ・ウォルフ、益岡徹、角野卓造、佐野史郎、加藤治子、山崎努ほか。ドイツに留学した官吏の悲恋を描く。
舞姫〔映画:1951年〕
1951年公開の日本映画。監督:成瀬巳喜男、原作:川端康成による同名小説、脚本:新藤兼人、撮影:中井朝一。出演:山村聡、高峰三枝子、片山明彦、田中茉莉子、二本柳寛、見明凡太朗、木村功ほか。
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『舞姫』
森鴎外
石炭をば早や積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと静にて、熾熱燈の光の晴れがましきも徒なり。今宵は夜毎にここに集ひ来る骨牌仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人のみなれば。\(一八九〇)
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世界大百科事典(旧版)内の舞姫の言及
【ロマン主義】より
…これに反対して,勝本清一郎は,〈正統なロマン主義〉の性格が,〈自由を求める精神,形式を破壊する精神,保守的勢力に対して革命的な精神,動的な自己主張の精神〉(〈《文学界》と浪曼主義〉)にあると考え,北村透谷の劇詩《楚囚之詩(そしゆうのし)》(1889)から《[蓬萊曲](ほうらいきよく)》(1891)へ展開する過程に,その顕著なあらわれを見ている。この勝本の立場からは,佐藤春夫がロマン的作品として高く評価する鷗外青年期の訳詩集《[於母影](おもかげ)》(1889)や小説《[舞姫]》(1890)は,その静的な形式美,節度,保守,妥協への希求,抒情への傾向において,酷評されざるをえない。しかし,ここにある対立は,単にヨーロッパのロマン主義のどこに文学史的な範型を求めるかの差にすぎない。…
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