談林(読み)だんりん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「談林」の意味・わかりやすい解説

談林
だんりん

江戸時代前期の俳諧流派貞門から蕉風への過渡期の俳風。文学史的意義は延宝~天和 (1673~84) の約 10年間で終った。当時この一派は宗因流,梅翁流とか,貞門側からは罵倒の意味で飛体 (とびてい) とか阿蘭陀 (おらんだ) 流とか呼ばれたが,延宝3 (75) 年の『談林十百韻 (とっぴゃくいん) 』の大成功によりその作者たちの結社名「談林」がやがてこの派の総称となった。煩瑣な法式と言語の知的遊戯に終始した貞門俳諧が人々に飽きられた寛文末年,連歌余技として俳諧をたしなみ俳壇から自由な立場にあった西山宗因新風を望む人々の期待が集り,初め大坂,やがて江戸,京都を中心に全国に流行,延宝中頃には全盛期を迎えた。しかし貞門の保守性を打破するのに急で,詩としての反省を欠き,内容,形式ともに乱雑放縦に陥り,短期間のうちに崩壊した。談林の功績は,俳諧を庶民生活のなかに解放し清新自由の風を吹込んだところにあり,そのなかから芭蕉,言水,才麿,信徳,来山,鬼貫らが真の詩に目ざめていった。主要な作者は,大坂の井原西鶴前川由平岡西惟中,江戸の田代松意野口在色高野幽山,京都の菅野谷高政,田中常矩ら。作品に代表撰集『生玉 (いくたま) 万句』 (73) ,『大坂独吟集』 (75) ,『中庸姿 (つねのすがた) 』 (79) ,『西鶴大矢数』 (81) など。

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世界大百科事典(旧版)内の談林の言及

【関東十八檀林】より

…江戸時代に制定された浄土宗僧侶育成のための学問所18ヵ寺の称。古くは学問所を談所,談義所,談林といった。栴檀(せんだん)林の略称である檀林を称するようになったのは,〈伊欄の悪木といえども,栴檀林の近くに生えれば,その香に染まる〉というたとえから,学僧が正しく訓育される学舎という意味からである。…

【俳論】より

…俳諧の文学的確立に当たっていたため式目作法に関するものが圧倒的に多く,また連歌との区別が〈俳言〉の有無に求められたため語彙季寄(きよせ)の類も多く出されたが,俳諧の盛んになるにともない付合(つけあい)技法論も活発に行われるに至った。貞徳没後は俳壇の主導権争いから論難書が交わされ,談林派が台頭するや,俳諧を和歌の一体とみる文学観によって,これを攻撃した。代表的な俳論書に立圃《はなひ草》(1636),重頼《毛吹草》(1638),貞徳《御傘(ごさん)》(1651),季吟《埋木》(1656)などがある。…

※「談林」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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