俳諧論書。撰集を兼ねる。松江重頼編。1645年(正保2)刊。ただし序文には寛永15年(1638)1月の成立とある。同年5月成立の《鷹筑波(たかつくば)集》(西武編)との先作争いによるか。7巻5冊より成る。巻一は〈連歌付・誹諧付差別の事〉〈作意の事〉等作法上の諸注意と,善悪の句体について用例を豊富に挙げて説き,式目を添える。巻二は俳諧と連歌の四季の詞,恋の詞,および〈世話付古語〉,巻三はいろは順の付合(つけあい)用語,巻四は諸国の名産・名物の名,巻五と六は四季発句,回文(かいぶん)の発句,〈句数の事〉等,巻七は四季・恋・雑の付句を収める。初版刊行後,池田正式(まさのり)の《郡山》と安原正章(貞室)の《氷室守(ひむろもり)》に攻撃されたが,その便利さから広く流布して版を重ねた。《毛吹草追加》(1647)がある。
執筆者:乾 裕幸
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…江戸中期におけるその範囲は,堀川以西,一条または中立売以北で,その町数は168町と数えられている。江戸初期の状況を伝える俳書《毛吹草》にもすでに西陣の撰糸,金襴,唐織,紋紗等々が名産として記されている。《毛吹草》によって京都の名産を紹介してみると,安居院(あぐい),寺之内の畳縁,筆柿,白みそ,一条の薬玉(くすだま),似紺染,二条の薬種,はかり,きせる,洗鮫,三条の袈裟(けさ),蚊帳(かや),四条の屛風,五条の扇地紙,渋紙,紙帳,六条の仏具,灯籠細工,山川酒,七条の編笠団子,八条の浅瓜,九条の真桑,芋,藍といった具合である。…
…第1は1542年(天文11)ポルトガル人が伝えたとするもの(佐藤信淵など),第2は1605年(慶長10)とする説(橘南谿(たちばななんけい)など),第3は秀吉の朝鮮出兵,つまり文禄・慶長の役(1592‐98)の際,種子を持ち帰ったとするもの(貝原益軒など)であるが,どうやら第3説が正しいようである。トウガラシの語が見られるのは《毛吹草》(1638)あたりからであるが,《多聞院日記》文禄2年(1593)2月18日条には,明らかにトウガラシである物がコショウとして記載されている。それは,コショウの種と称する物をもらったというのだが,その種はナスの種のように小さく平らで,赤い袋の中にたくさん入っており,その袋の皮の辛さには肝をつぶしたというのである。…
…芹川の行幸にすりかりぎぬの袂に書付けるは,人なとかめそと詠じたり〉と,見出し語に関連して必要な《伊勢物語》や〈富士の巻狩〉〈式三番〉等の知識が補記されている。この種のいろは別付合用語集には,1645年(正保2)刊の重頼編《毛吹草(けふきぐさ)》巻三,56年(明暦2)刊の皆虚(かいきよ)編《世話焼草(せわやきぐさ)》巻三,62年(寛文2)刊の是誰(これたれ)著《初本結(はつもとゆい)》があり,人々に便益を与えてきたが,さらに豊かな語彙(ごい)集が求められ,69年梅盛は《便船(びんせん)集》を編んだ。《類船集》はその改訂増補版で,時代の好尚を反映して通俗的な語彙が増加している。…
※「毛吹草」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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