飛行記録集積装置(読み)ひこうきろくしゅうせきそうち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「飛行記録集積装置」の意味・わかりやすい解説

飛行記録集積装置
ひこうきろくしゅうせきそうち

航空機の運航中の諸データを記録する装置AIDS(aircraft integrated data systemの略称)といわれる。機上、地上の二つのシステムで構成された総合的データ解析システムである。機上システムは機内に装備された感知器から送られたデータを、一定のデジタル信号に変換して連続的にカセット・テープに記録する。記録はただちにコンピュータ処理してプリント・アウトすることができるが、機上ではコンピュータの能力の関係もあり、即時に解析、処理されるデータはごく一部に限られる。一方、地上システムは飛行中に集積された記録を地上の大型コンピュータにかけて整理し、故障の早期発見、性能劣化の状況の把握を行い、ますます複雑で高価になっていく航空機の、運航の効率や整備の能率の向上を図るのに用いられる。民間輸送機に搭載が義務づけられているフライトレコーダーflight data recorderと似ているが、これが事故原因の究明のために用いられるのに対し、AIDSは単に飛行データを収集し記録するだけで、目的はまったく異なっている。集積するデータはAIDSがはるかに多いが、耐熱、耐衝撃性への対策はそれほどなされていない。集録するデータのおもなものは、速度、高度、機首方位、ピッチ・ロール・ヨー角、風速風向、マッハ数、舵角(だかく)および操縦桿(かん)などの位置関係、自動操縦装置操作およびINS(慣性航法システム)のデータ、排気ガス温度、推力設定値、油温油圧、回転数、振動、そのほか燃料、空調着陸装置等のシステム関係、および補助動力装置関係のデータ等、約120種類、380項目にも上る膨大なものである。

[落合一夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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