改訂新版 世界大百科事典 「着陸装置」の意味・わかりやすい解説
着陸装置 (ちゃくりくそうち)
landing gear
航空機が地上にあるときその脚になる部分で,降着装置ともいう。離着陸の際に滑走しなければならない飛行機では車輪式が多いが,ヘリコプターやグライダーではそりを利用したそり式着陸装置もよく見られ,また雪上ではスキーが用いられることもあり,水上機には舟形をした浮きのフロートfloatが使われる。エアクッション式の着陸装置も研究されている。
ライト兄弟の初の飛行機は木のレールを走る台車に乗って離陸滑走し,そりで着陸した。しかしこれでは不便なため,その後の飛行機では車輪をもつようになり,機の重心よりやや前方の左右に主輪を,尾部にそりか尾輪をつける形式にほぼ統一された。第2次大戦までこの尾輪式着陸装置が主流だったが,主輪が重心より前にあるため滑走中の方向安定が悪く,くるりと向きを変えてしまう(グランドループという)ことがあった。そこで1930年代にアメリカで機首に首振式の前輪をつけ,主輪は重心よりやや後方の左右に置く前輪式着陸装置が使われ始めた。これは滑走中の方向安定がよいほか,ブレーキを強くかけても前へつんのめらず高速での着陸に適するので,第2次大戦後は前輪式が主流になった。このほかに主輪を自転車のように前後に並べ,左右に補助輪をつけた飛行機も少数ある。
着陸装置の構成
車輪式の着陸装置はゴムタイヤ(一部の小型機を除いてチューブレスタイヤ)つきの車輪とその支柱とで構成され,一般に脚と呼ばれる。脚が出ていると機の空気抵抗は約2倍に増すので,飛行中は機内に引っ込めてしまう引込脚が1930年代に実用化された。大型機では滑走路面への荷重を分散させるため主輪の数を増やしている。車輪のブレーキは大型機や高速機は多板式,小型機は単板式の油圧ディスクブレーキがふつうで,ブレーキを強くかけたときにタイヤのロックを自動的に防ぐアンチスキッド装置をもつものが多い。支柱には着陸や走行中のショックを和らげるため緩衝装置が組み込まれ,これは圧縮空気と油を入れたシリンダーの中をピストンが動く空気油圧式が多い。油だけを入れた液体ばね式もあり,軽飛行機では板ばねの支柱やゴムの緩衝装置も使われる。
執筆者:久世 紳二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報