航空法で装備を義務付ける飛行記録装置。航空機の高度や速度、機首の方位やエンジン出力など飛行中のデータを時刻や飛行時間とともに自動的に記録する。操縦室の音声や管制官との交信内容を記録するボイスレコーダー(音声記録装置)と事故原因の究明に使う。事故の衝撃や火災、水没に備えて頑丈な箱に収納され「ブラックボックス」と呼ばれるが、発見しやすいようオレンジ色などに塗られる。水中で位置を知らせる装置も取り付けられている。
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航空機事故の原因解明のために航空機に搭載されている飛行記録装置。最大離陸重量が5700キログラム以上の航空機はこの装置を搭載することが義務づけられ、離陸を開始するときから着陸して滑走を終えるまでの間、常時作動させておかなければならない。
フライトレコーダーは、最初はアナログ方式のFDR(flight data recorder)が用いられ、高度、対気速度、垂直加速度、機首方位、経過時間の五つのデータが記録されていた。ボーイング747型機をはじめ最近の航空機にはデジタル方式で磁気テープに記録されるDFDR(digital flight data recorder)が搭載されており、FDRの五つのデータのほかに、飛行機の姿勢、操縦翼面の動き、エンジンの運転状態、航空交通管制機関と連絡した時刻など20種以上のデータがエンドレス形式で25時間分記録されている。装置は、航空機が事故のとき破損しないように、耐熱・耐衝撃構造のカプセルに収められ、機体尾部のテールコーンの部分に取り付けられている。データの読み取りはコンピュータ処理によって行い、プリントアウトしたデータを使用して解析を行っている。フライトレコーダーの記録は少なくとも60日間保存することになっている。
[青木享起・仲村宸一郎]
正しくはフライトデータレコーダーflight data recorderといい,略してFDR,あるいは飛行データ記録装置とも呼ばれる。飛行中の航空機の状態を連続的に記録する装置で,おもに事故の調査に使用されるが,操縦訓練の参考資料として使うこともできる。1960年代初期から実用化され,現在では各国とも民間の大型輸送機にはその搭載が義務づけられている。初期の装置はステンレススチールのテープにアナログ表示でデータを打刻する方式をとり,記録されるデータも5項目程度にすぎなかったが,70年代以降,磁気テープを用い,数十項目以上を記録しうるディジタル方式の装置が実用化され,より精密な調査ができるようになった。フライトレコーダーは事故の際にも損傷を受けないよう,海水やジェット燃料の中で48時間以上,1100℃の温度に30分以上,1000G(Gは重力加速度)の衝撃に0.011秒以上耐えるようにつくられたカプセルの内部に入れられ,火災の影響を受けにくい部分に取りつけられている。最近では整備作業の参考にするため,飛行中の機体・エンジン各部分の作動状況を記録する装置も使用されている。
執筆者:関川 栄一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(鳥養鶴雄 元日本航空機開発協会常務理事 技術士(航空機部門) / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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