…人骨の採集をおもな目的として,1903年以降8次にわたって発掘調査がおこなわれ,総計134体以上の人骨が出土した。頭頂部に石斧様のものによる打撃孔のある人骨や,尺骨に石鏃が射込まれた人骨など事故や抗争を示す資料のほか,食人の風習を思わせる切傷のある人骨が出土している。また,叉状研歯のある人骨は8体と多く,そのうち7体には下顎中・側切歯4本を抜く4I型の抜歯が施されており,縄文時代晩期の婚後居住規制を考えるうえでの重要な資料である。…
…西アフリカのイフェ王国やジュクン王国では,即位式に際して,新王は先王の内臓の一部を食べる。この行為は内臓に祖先の力が宿るという考え方に基づいており,この〈食人〉を通して,祖先の力が先王から新王へと,宿る身体を換えるのである。一方新王はこれによって支配する力をもつのである。…
…飢饉などの極限状態において,あるいは特殊な反社会的,病的な行為として,あるいはまた愛の極限において,人間が人間を食うことがあるということは広く知られている。しかし狭義には,カニバリズム(人肉嗜(し)食,食人習俗)という語は,食人が正常かつ合法的な行為として社会的に認められていたり,一定の状況または条件のもとで食人が義務もしくは権利として規定されたりしている場合,つまり,社会的に容認された慣習としての食人を指すのに用いられる。この意味でのカニバリズムは,人類社会にきわめて広く見られる慣習だと一般に信じられてきた。…
…約13体と推定される。人骨はすべて細かい破片となり,完全なものは皆無であったから,研究者の多くは,正常の埋葬ではなく,食人の結果捨てられたものと見なしており,化石人類が食人を行ったことを示す最初の例と考えられる。この人類は一般にリス/ウルム間氷期に由来すると見なされ,したがってヨーロッパに普通に見られるウルム氷期のネアンデルタールよりは古く,多少原始的であると考えられている。…
…この中にはしばしば死を象徴的に克服する生あるいは再生のモティーフが現れる。その極端な例は,メラネシアのいくつかの民族で行われている,遺族が死者の肉体の全部または一部を食べる,いわゆる族内食人の儀礼である。これは死者の生者への直接的同化による死の超克であるが,それ以外にも死の儀礼は性的豊饒(ほうじよう)の表現(例えば乱交)や遊戯の過剰を伴うことが多い。…
…先史時代の遺跡から発見される人類の骨のうち,頭蓋骨とその一部の数は他の骨の数よりも多いことから,頭部ないしどくろが早くから人類の文化に特殊な役割をもっていたことが推論されている。食人の習慣があってどくろを特定の場所に捨てたから今も多く見つかるのだとする説や,特に脳髄を食べた後にどくろを呪術の対象として保存する風習があったためとする説などがある。出土されるどくろに頭蓋底部を欠くものが少なくないので,脳に霊的な意義を見た先史人類がこれを儀礼的にも食べたことは疑えない。…
※「食人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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