日本大百科全書(ニッポニカ) 「食寝分離」の意味・わかりやすい解説
食寝分離
しょくしんぶんり
住宅において食事室と就寝室とを分離することをいい、西山夘三(うぞう)(1911―94)により住宅計画の原理として位置づけられた。従来、畳を敷いた伝統的な日本の住宅は、どの部屋も自由に何にでも転用できると考えられていたが、西山は庶民住宅の住み方を調査し、どんなに部屋数の少ない小住宅でも、食事室と就寝室とを分離しようとする傾向がきわめて強いことをつきとめ、食寝分離を基礎とした住宅計画論を展開した(「住居空間の用途構成に於(お)ける食寝分離論」1942)。この考え方は、その後の住宅計画の基本的方向を定めることになり、第二次世界大戦後急速に普及したダイニングキッチン(DK)や、これと就寝室とを組み合わせた2DK、3DKといった平面構成を導入する際の理論的根拠ともなった。さらに食寝分離論は、住み方調査の分析に基づいて住宅計画をたてるという科学的な計画方法の提言を含んでおり、今日の建築計画学の成立に大きく寄与したといえる。
[髙田光雄]