ダイニングキッチン(読み)だいにんぐきっちん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイニングキッチン」の意味・わかりやすい解説

ダイニングキッチン
だいにんぐきっちん

食卓椅子(いす)を用意して食堂の機能を付与した台所和製英語で、DKと略称される。第二次世界大戦の敗戦によって、日本の住宅事情がきわめて悪化した時期に、狭い面積の中で食寝分離を図るために考え出された。公営住宅の1951年(昭和26)の標準設計の一つとして取り入れられてから、公営住宅はもとより、公営以外の集合住宅、独立住宅にも急速に普及した。

 台所で食事をすることは、アメリカでは食堂を設けたうえで、台所の一隅に簡単に朝食をとるブレックファスト・コーナーを設ける例があり、イギリスでも台所を調理する部屋と下ごしらえする部屋とに分け、調理する部屋と食堂を兼ねるダイニングキッチンあるいはキッチンダイニングの習慣があった。日本では敗戦後の住宅事情を反映して、一室住居のようないくつもの機能を複合した部屋がつくられたり、狭い工員社宅で台所に食事の場所を増築している例の調査報告などがあり、炊事の場所と食事の場所を一部屋にする先駆的な事例がみられた。国内の事情と外国の影響から、東大建築学科吉武研究室によってダイニングキッチンを含む公営住宅の51C型が、1951年に提案された。51C型で南面にとられたダイニングキッチンが広まるには、電気冷蔵庫ステンレス流しの普及によって、暖かい部屋での食品の貯蔵と不衛生になりやすい水回りの問題を解決することが必要であった。これらの問題が解決して広く普及したダイニングキッチンは、敗戦後の日本の住宅の性格を特徴づける存在となっている。

 ダイニングキッチンは、炊事・食事・後かたづけの一連の作業を家族共同のものとしたが、一方では台所で食事をする意識となり、食品のインスタント化と相まって、食事のマナー退廃をもたらし、教育、通勤事情も絡んで、集まって食事をする風習の妨げになっている。近年は住宅事情がいくぶん豊かになって、独立した台所を設ける傾向がみられ、これに伴って、食堂を居間といっしょにしたリビングダイニングをつくる家が増えている。

[平井 聖]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダイニングキッチン」の意味・わかりやすい解説

ダイニングキッチン
dining kitchen

食事室と台所とを1つにした部屋をいう。最近の住宅では,スペースを節約するためと主婦の労力を軽減するために,この形式の部屋が広く用いられている。

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