家族生活の行われる建築物と,これに付随した諸施設を含める。住居という語よりかなり広い範囲まで含んだ,やや不明瞭な概念である。住宅は,人類が家庭を営み家族全体が共同生活をするようになった時代に始り,その後家族生活の変遷とともに移り変ってきた。原始時代の住宅は,竪穴住居や高床住居のように外部環境から身を守るのがおもな目的で,炊事中心の一室だけの建物にすぎなかったが,次第に家族構成が複雑化し,家庭生活が発展するにつれてその機能も複雑となり,多室の住宅へと発達した。平安,鎌倉時代に寝殿造のような大家族用住宅や武士の住宅が現れ,室数の多い豪壮な住宅が建てられた。近代に入ってから,再び家庭内の活動が整理され家族構成が単純化されると,住宅の規模は単純で小さなものになった。すなわち大家族制がすたれ,夫婦を中心とする家族構成となり,また一方では子供の教育は発達した教育機関で,冠婚葬祭などの行事は適当な会場で行われるようになった。現在では住宅は主として家事作業,家族の休養とだんらん,幼児の養育,老人の保護の場となっている。家族各自の生活が能率よく,かつ互いに干渉されないで行われるために,共同生活は居間を中心とし,家事作業は台所などを中心とし,各自の私生活は寝室,子供室,老人室などで独立して行われるように配慮されている。従来は独立した住宅が普通であったが,都市の発達につれて,共同住宅が次第に多くなり,特に第2次世界大戦後はコンクリートアパートが非常に多く建設されるようになり,現代の住宅の大きな特徴となっている。
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1 人が住むための家。住居。すまい。すみか。「住宅地」「公営住宅」
2 すみかとすること。住みつくこと。
「六条の三筋町に―しけり」〈色道大鏡・一三〉
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住宅とは人間生活を入れる器と考えることができる。あらゆる建築は程度の差こそあれ人間の住に対する要求を実現するためにつくられたものであるが,住宅はその中でもっとも直接的,基本的な要求にこたえ,家族生活の拠点となるものを指すことが多い。原始時代には建築の種類は住宅だけであったが,生活が複雑になるにつれ,住宅からいろいろな機能が外に分化,集約化されるようになる。例えば,古代における倉庫,宗教建築に始まり,近代の学校,病院,娯楽施設,宿泊施設,商店,飲食店,工場,事務所などの発生がそれである。
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① 人の住む家。すまい。すみか。 「 -街」 「 -地」
② 居所を定めてそこに住むこと。すまいとすること。 「近きこそよけれと、知らぬ松本に-して/浮世草子・新永代蔵」
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住宅とは、家族がその中で生活するための器である。人間が生きていくためには、まず食べる・寝るという生理的に必要な条件を満たすための場所がいる。とくに、寝ている間外界からの働きかけに対してまったく無防備であることから、寝るという行為のために身を守る覆いが必要である。また、極端な暑さ・寒さに対して人間の体は十分に順応することができないから、直接体に着ける衣服を調節し、さらに囲まれたスペースをつくらなければならない。雨が降り雪が積もる地域では、体がぬれないように、ぬれて体温を奪われることを避けるため、ぬれた体を乾かすため、冷えた体を暖めるために覆いが必要になる。したがって、住居の始めは寝るための閉鎖的な場所で、階級が生まれ昼間働かなくてもよい人々ができてくると、その周りに昼間のスペースが加わるのが普通である。
始めは、身を守るために木陰や天然の洞窟(どうくつ)などを利用した。世界中のあちこちの洞窟で、その痕跡(こんせき)がみつかっている。たとえばヨーロッパでは、もっとも古いといわれているフランスのラスコーやアルタミラの洞窟で、内部の岩肌に描かれた絵画から、洞窟を根拠地として狩猟をしていたことや、テントをつくっていたことが明らかになっている。しかし、どこででも都合のよい自然の地形があるというわけにはいかないので、身近にある材料を使って覆いをつくろうと試みている。技術をほとんどもっていなくても扱えるどこにでもある材料は土であった。そして、草や木が使われた。
通常、人間は1人で生活することはなく、集団を形成している。集団のもっとも小さいそして基本となるのが家族である。さらに、家族が形づくる家が集まって町や村ができる。その結果として、現代では都市や村のような集団にまで発達している。このような集団は、現在では近代的な生産手段のために必要なのであるが、もともと種の保存とか、敵に備えての自衛的な目的があったと考えられる。[平井 聖]
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〘名〙
① 人が住むための家。すみか。住居。
※殿暦‐康和四年(1102)九月一二日「巳剋焼亡、安芸守経忠朝臣住宅也」
※東寺百合文書‐へ・建武四年(1337)八月二一日・夜叉王入道性身請文「ちうたくをこほちめされ候とも」
② (━する) すみかとすること。住みつくこと。
※評判記・色道大鏡(1678)九「虎蔵は、六条の三筋町に住宅(ヂウタク)しけり」
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世界大百科事典内の住宅の言及
【住居】より
…
【総説】
住居の類語としては,すぐに住宅・住いがあげられる。住宅と住居を比べると,住宅のほうが人間のすみかとしての建物の側面を強く含意する。…
【住宅政策】より
…資本主義経済下では住宅市場の価格メカニズムが十分機能せず,住宅の量的不足や質的低下の問題が社会現象として現れやすい。これを住宅問題という。…
【住宅問題】より
…住居は人間の生存と生活の基盤であり,生命の安全と健康と人間の尊厳を守り,家庭生活の器として市民をはぐくみ,まちと文化をつくる最も基本的な人間環境であり,社会の基礎単位である。住居は都市の構成要素であるから,低質住宅の集積は不良都市形成の原因となる。住居は風土と生活に根ざして生活文化をつくり,人々の安定した居住はコミュニティを形成して暮しを支え,民主主義の土壌形成に寄与する。…
【民家】より
…
【日本】
民家は一般概念では庶民の住宅を意味する。しかし,民俗学や建築学の分野で使われる〈民家〉の概念はかなり限定されており,地域に密着した素材や技術を使って建設された庶民の住宅を意味する。…
【室町時代美術】より
…それは,平安時代の宮廷美術に代わる,新しい貴族趣味の美術としての側面をそなえている。義満が建てた北山殿の遺構である鹿苑寺の金閣(舎利殿,1398)は,それまでの住宅建築になかった三層の楼閣であり,禅宗寺院の影響が指摘されている。しかしながら,北山殿の主屋は寝殿であり,独立して建てられた会所は,唐物,唐絵の陳列場でもあった。…
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