食道モリニア症(食道カンジダ、カンジダ性食道炎)      (読み)しょくどうモリニアしょう(しょくどうカンジダ、カンジダせいしょくどうえん)      (英語表記)Esophageal moniliasis (Esophageal candidiasis, Candida esophagitis)

六訂版 家庭医学大全科 の解説

食道モリニア症(食道カンジダ、カンジダ性食道炎)      
しょくどうモリニアしょう(しょくどうカンジダ、カンジダせいしょくどうえん)      
Esophageal moniliasis (Esophageal candidiasis, Candida esophagitis)
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 モリニア・アルビカンス(カンジダ・アルビカンス)による病気で、いろいろなカンジダ種を起炎菌とする感染症です。現在は食道カンジダ、カンジダ性食道炎といわれています。

 食道の感染症のなかで最も多い病気で、全身状態が低下した時に感染を引き起こします。

原因は何か

 真菌の一種であるカンジダは、自然界では人体の皮膚、粘膜に広く存在しています。この菌は、嫌気(けんき)的条件下(空気にさらされていない)でよく増殖します。カンジダの外酵素は宿主(しゅくしゅ)の細胞膜を溶解し、組織内へ侵入します。しかし、宿主正常の状態では感染は成立しないため、消化管カンジダ症になるには何らかの発病要因が必要です。

 すなわち、①起炎菌の粘膜侵入性、腸管内の異常を招くような抗生剤、抗菌療法時、②免疫抑制療法やステロイド療法時、③誤った食事など、により感染が成立します。③の誤った食事とは、食物繊維の摂取不足や過剰な糖の摂取です。このような食事は腸管内細菌(そう)のバランスを乱します。

 また、食道カンジダは口腔内から移行する場合があります。食道壁の機械的、物理的な粘膜の損傷時にも感染が起こります。食道憩室(しょくどうけいしつ)や代謝性疾患、糖尿病などに合併することがあります。

症状の現れ方

 最もみられる症状は、嚥下(えんげ)困難、胸骨部の痛み、嘔吐ですが、無症状の場合も多くあります。

検査と診断

 内視鏡検査で、白い粟粒(ぞくりゅう)大から連続した白色の苔状のものが存在し、食物残渣(ざんさ)と異なって、水で洗い流されないものがあれば診断されます(図15)。この白苔(はくたい)顕微鏡で調べたり培養して確定診断を行います。

治療の方法

 治療は、ナイスタチンナタマイシン、アムホテリシンBの経口投与です。アムホテリシンBのシロップ剤の経口投与は効果的です。

 食事療法としては糖分の制限を、衛生管理面では歯ブラシの交換を行います。歯ブラシにカンジダ菌が付着すると、なかなか流水では落ちないためです。義歯(ぎし)などは使用後に、消毒薬で殺菌消毒するようにします。

病気に気づいたらどうする

 食道カンジダと診断された場合、抵抗力が正常の場合は自然に治りますが、長期にステロイド薬などを服用している場合は、前述のような日常生活の改善を行い、専門医のもとで内服治療をしてください。つかえ感、胸骨後部痛がある場合は、内視鏡検査をすすめます。

村田 洋子


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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