朝日日本歴史人物事典 「飯篠長威」の解説
飯篠長威
生年:嘉慶1/元中4(1387)
室町後期の剣術家。下総国香取郡飯篠村(千葉県香取郡多古町)に生まれた郷士。諱は家直。長威は号。幼少から武技を好み,伊勢国の鹿伏兎刑部少輔について剣を学んだといわれ,また香取神宮に参籠し荒修行をして,槍刀の術について自得,一流を開創すると天真正伝香取神道流と称したと伝えられる。鹿島の神宝は太刀,香取のそれは鋒と伝えられているが,家直が槍術から入ったのも,この時代の戦場が主として槍を武器としたからであろう。この天真正伝香取神道流が後世の剣,槍,薙刀など諸流中の最も根幹をなすひとつとなった。門からは富永参吉,松本政信など著名剣士が輩出,富永流,鹿島神陰流が起こり,兵法の隆盛をみたのも家直を近世剣法の始祖たらしめるゆえんでもあろう。没年は明らかだが,生年は飯篠家の家伝に元中4(1387)年とあり,これに誤りがなければ102歳で没したことになる。<参考文献>「撃剣叢談」(『武術叢書』),「武術流祖録」同
(中井一水)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報