香川郡(読み)かがわぐん

日本歴史地名大系 「香川郡」の解説

香川郡
かがわぐん

面積:一三六・五七平方キロ
塩江しおのえ町・香川かがわ町・香南こうなん町・直島なおしま

県のほぼ中央部に位置し、現在は高松市南方の香川町・香南町・塩江町と、同市北方海上に浮ぶ島嶼部の直島町から構成される。しかし直島諸島が香川郡に所属したのは近代以降であり、近世までの香川郡は直島町を除く現三町域と現高松市の西半を郡域とし、東は山田やまだ郡、西は阿野あや郡、北は海、南は阿波国に接していた。南部は阿讃山脈に連なる山地・丘陵地で、北へ向かうにしたがい平地が開け、北は高松平野となる。河川は香東こうとう川・本津ほんづ川・御坊ごぼう川が北流する。郡名は天平七年(七三五)一二月五日の弘福寺領山田郡田地図(多和文庫蔵)に「山田香河二郡境」とみえるのが初見で、同一七年九月一九日の知識優婆塞貢進文(正倉院文書)では香河、平城宮跡出土の木簡二点および天平勝宝四年(七五二)一〇月二五日の造東大寺司牒(正倉院文書)では香川となっている。以後香河・香川は混用され、「和名抄」も高山寺本は香河、東急本は香川とする。「拾芥抄」は香川。訓は「和名抄」東急本国郡部に「介加波」、「拾芥抄」に「カカハ」とあって異訓はない。なお以下の記述は近世までの香川郡を対象とする。

〔原始〕

阿讃山脈に源流をもつ香東川は、塩江町から香川町・香南町の町境をたどりながら高松市を経て瀬戸内海に注ぐ。当郡における古代文化はこの香東川を中心として展開する。

旧石器時代の遺跡として著名な国分台こくぶだい遺跡(綾歌郡国分寺町)は、古代の香川郡笠居かさおり郷から阿野郡新居にいのみ郷にかけて広がる丘陵地帯にあるが、同遺跡を残した人々が国分台丘陵とは指呼の間にある石清尾いわせお山塊に及んでいた形跡は認められない。春日かすが川上流の山田郡池田いけだ郷の郷域からは縄文土器が出土しており、最近の調査では縄文時代晩期の農具が出土したという報告もあるので、香東川流域の香川郡大田おおた郷・多配たへ郷地域からも今後の調査により縄文時代の集落が検出される可能性はあるだろう。弥生時代前期の遺跡も検出されていないが、中期に入ると石清尾山の摺鉢すりばち谷に高地性遺跡が出現する。同じ山塊の瀬戸内海に面した高松市郷東ごうとう遺跡から、北九州との関連が強い中広形銅鉾が出土しており注目される。おそらく武器型青銅器を祭器として使用している他の部族との間に、部族連合が成立しつつあることを意味している。中期の後半から後期に入ると集落は香東川の上流地帯にまで形成されるようになる。塩江町安原下やすはらしもの八幡神社に神宝として保存されている四口分の平形銅剣は、その周辺から出土したとされている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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