内科学 第10版 「骨格筋の形態と機能」の解説
骨格筋の形態と機能(筋疾患)
骨格筋は筋線維(横紋筋細胞)の集合体であり,随意筋として身体の運動を司る.筋線維は胎生期に単核の筋芽細胞が融合してできた多核細胞であり,直径20~100 μm,長さ数mm~15 cmに及び,結合組織性の薄い筋内膜で包まれる.集合した個々の筋線維は筋束を形成し,筋周膜で被われる.この筋束はさらに集合して筋膜で包まれて紡錘形の骨格筋を形成する(図15-21-1).成熟した筋線維の核は,筋形質膜(細胞膜)直下に偏在している.筋線維の細胞質である筋形質の大部分は筋原線維で占められる.筋原線維はおもにミオシンからなる太いフィラメントとアクチンからなる細いフィラメントの2種類が存在し,交互に配列している(図15-21-2).筋原線維はアクチンフィラメントのみの電顕で明るくみえるI帯とミオシンフィラメントが存在し,暗くみえるA帯が交互に繰り返す構造をとり,I帯の中央部にはZ線があり,アクチンを固定する.Z線とZ線までの距離は約2.2 μmであり,これを収縮単位のサルコメア(筋節)とよぶ.ミオシンは分子量48万でATPを分解するATPase活性を有し,数多くのアイソフォームが筋の発育過程に従って変化する.その他の重要なフィラメント構造として,Z線どうしを縦につなぎサルコメアの構造を維持している巨大分子(分子量約300万)であるαコネクチンおよびZ線から伸びアクチンの長さを規定するネブリンがある.
筋細胞膜はジストログリカンやサルコグリカン複合体が存在する筋形質膜とその外側でラミニンやⅣ型コラーゲンが存在する基底膜からなっている.形質膜直下にジストロフィンがありジストログリカンと結合している.Ⅵ型コラーゲンは基底膜と細胞外マトリックスの線維性コラーゲン(Ⅰ型,Ⅲ型)をつなぐように広範に分布している(図15-21-3).
神経筋接合部は前角運動ニューロンの終末が接する部分を指し,その構造を運動終板とよぶ.このシナプス間隙の距離は約50 nmであり,シナプス後膜にはアセチルコリン受容体がある.
(2)筋の収縮と弛緩
筋の収縮機構には筋形質膜が陥入したT管(横管)とこれをはさむ筋小胞体の終末槽からなる三つ組構造(トライアド)が重要である.形質膜の脱分極はT管側にある電位感受性蛋白であるCaチャネルに伝わり,さらに小胞体側のリアノジン受容体(Ca放出チャネル)へと伝わり,ついで小胞体内のCaイオンが放出されてアクチン上のトロポニンに結合してアクチン-ミオシン相互作用を可能とし,筋を収縮させる(図15-21-4).これらを総称して興奮収縮連関(E-Cカップリング)とよぶ.筋が弛緩しているときには細胞質のCaイオンは筋小胞体のCaポンプによって再び筋小胞体に取り込まれる.したがって筋は収縮にも弛緩にもエネルギーが必要であり,このATP産生系にはクレアチンリン酸,グルコース・グリコーゲン,脂肪などが利用される.
(3)筋線維タイプ
骨格筋線維は赤筋(タイプ1)と白筋(タイプ2)線維に分類される(表15-21-1).タイプ1線維は収縮が遅く姿勢の保持などに関与し傍脊柱筋などに数が多い.タイプ2線維は速い運動に関係している.よく筋生検がなされる上腕二頭筋や大腿直筋のタイプ1,2線維の割合は1:2でモザイク状に分布している.[樋口逸郎]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報