改訂新版 世界大百科事典 「高麗氏」の意味・わかりやすい解説
高麗氏 (こまうじ)
高句麗の王族級出身の渡来氏族。668年の高句麗の滅亡前後,日本に亡命,帰化した人々の子孫。716年(霊亀2)駿河,甲斐,相模,上総,下総,常陸,下野の7国の1799人の高句麗人を移して武蔵国に高麗(こま)郡が置かれた(埼玉県飯能市,日高市一帯)。武蔵高麗氏の始祖は若光といわれ,703年(大宝3)王姓を与えられた。高麗神社(日高市)社家高麗氏にはその系図が伝わる。発掘された大寺廃寺,高岡廃寺も高麗氏が造営した奈良・平安時代の寺院であろう。一方,背奈福徳を祖とする系統は上京して官人となり,行文は720年ごろ,明経博士で宿儒とされ,《万葉集》《懐風藻》に詩歌を残す。その甥高麗福信は豎子から弾正尹に至り,名をあげた。ほかに高麗大山,同広山,同殿嗣など,奈良時代の外交使節として唐,渤海に渡った人物が多い。彼らははじめ背奈(消奈)公(のち王)を称し,のち高麗(巨万)朝臣,高倉朝臣と順次改姓された。王族系と別系統の氏族はもっぱら大狛,狛氏を称した。
執筆者:鈴木 靖民
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報