改訂新版 世界大百科事典 「鱗骨魚」の意味・わかりやすい解説
鱗骨魚 (りんこつぎょ)
gar pike
鱗骨目鱗骨魚科Lepisosteidaeの淡水魚の総称。ガーパイクともいう。同類は新生代第三紀以後の化石種として知られているが,現生種としてはすべてこの科に属し,北アメリカおよび中央アメリカの川にすむ4種ほどがあるにすぎない。〈生きている化石〉といわれる。体は延長し,かわら状に並ぶひし形の硬鱗で覆われているが,チョウザメなどと違い,この硬鱗には象牙質様の中層(コズミン層)がなく,表面には歯状突起がある。上下両あごはくちばし状に突出し,英名も同様に両あごの突出しているダツ(gar)に由来する。両あごには強大な歯がある。鼻孔は吻端(ふんたん)に開く。背びれとしりびれは体の後部にあり尾びれに接近する。骨格は硬骨。腸には痕跡的ならせん(螺旋)弁があり,幽門垂は多数。うきぶくろ(鰾)は不完全に左右2室に分かれ,内面には胞状の隆起があり,血管に富んでいて,肺に似た形状を示し,空気呼吸ができる。
キューバ,メキシコ,アメリカ合衆国南部に分布するalligator gar(Lepisosteus spatula)はもっとも大きく,全長3mにも達する。longnose gar(billfishともいう。L. osseus)は五大湖からフロリダ,メキシコにわたり分布域が広いが,水族館での飼育記録によれば20年以上生き,全長1.5mに達する。すべて,運動性はかなり鈍いが,魚食性で,またきわめて貪食(どんしよく)である。網その他の漁具を損傷することもあって害魚とされている。
執筆者:日比谷 京
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報