中国古代の太鼓。球状に近い胴の切口の両面に皮をあて縁を鋲でとめた小太鼓で,奏法は左脇に支え,右手の桴(ばち)で革面を打ち,同じ左手に持った鼗(とう)(振鼓(ふりつづみ))と併用するところに特色がある。中国唐代の西域楽で用いられた。その特異な演奏法は,中央アジア,敦煌その他から発見された唐以来の多数の絵画などにより知られる。日本には奈良時代唐楽の楽器としてもたらされたがすぐにすたれた。
執筆者:増山 賢治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 現行の雅楽では,舞楽用に,大きな枠付き締太鼓の短胴のものである〈大(鼉)太鼓(だだいこ)〉(左右2種ある)を用い,管絃用に,小さな鋲打ち短胴のものである〈釣太鼓〉(狭義の〈楽太鼓〉。広義には雅楽用の太鼓をいう)を用いるほか,行道(ぎようどう)用の〈荷太鼓(にないだいこ)〉や,〈振鼓(ふりつづみ)〉〈鶏婁鼓(けいろうこ)〉があり,後2者は併用され,特定の舞楽曲(《一曲》)でも用いられる。舞楽・管絃ともに,枠付き長胴の小型の締太鼓である〈羯鼓(かつこ)〉を用いるが,右方の楽曲では〈羯鼓〉に代えて〈三ノ鼓(さんのつづみ)〉が用いられる。…
…中国では《礼記(らいき)》《論語》などの文献に記されており,漢以後近年まで雅楽に使用された。また唐代以後歴朝の宮廷燕饗楽にも用いられたが,唐代には鼗は鶏婁鼓(けいろうこ)とともに用いられ,左手で鼗を振り鳴らし,鶏婁鼓を左脇下に革面を前にして抱え,あるいは腹の前に横に向けて支えて右手の桴(ばち)で打った。日本には奈良時代に唐楽の楽器として伝わり,舞楽用の振鼓として鶏婁鼓とともに用いられた。…
…四天王寺舞楽では,路楽(みちがく)・行道(ぎようどう)の際にも,左方の楽頭が持つ。首から鶏婁鼓(けいろうこ)を下げ,右手にその桴(ばち)をもち,左手にこの振鼓を持つ。小さな円筒型の太鼓2個を直角に重ね,二つの胴の中央に柄を1本貫通させたもので,小さな玉をつけたひもを1本ずつ,各革面の先端に結びつけ,舞人が柄を振ると,この玉が革面に当たって音が出る。…
※「鶏婁鼓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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