代表的日本人(読み)だいひょうてきにほんじん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「代表的日本人」の意味・わかりやすい解説

代表的日本人
だいひょうてきにほんじん

内村鑑三(かんぞう)の著。1894年(明治27)11月民友社より刊行の『Japan and the Japanese』を1908年(明治41)4月『The Representative Men of Japan』と改題して警醒(けいせい)社より刊行したもの。旧版は内村の第二の英文著作で、その序文は日清(にっしん)戦争の「黄海海戦(9月26日)勝利の翌日」に書かれている。著者34歳の年である。内村は本書において、日本と日本人に固有の価値を自らの英語で西欧世界に紹介しようという意図に基づき、日本の精神的伝統のなかに生きた偉人として西郷隆盛(たかもり)、上杉鷹山(ようざん)、二宮尊徳(にのみやそんとく)、中江藤樹(とうじゅ)、日蓮上人(にちれんしょうにん)の5人を取り上げ、彼らのなかに旧約の預言者をみいだした。そして、人は預言者を通してキリストにつながれたように、内村は代表的日本人を通して新約のキリストにつながる道を発見し、日本にはキリスト教が根づくために神によって備えられた土壌があると確信し、そこから日本的伝統という旧約のうえに接ぎ木されたキリスト教を自己のキリスト教とした。

[田代和久]

『鈴木俊郎訳『代表的日本人』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の代表的日本人の言及

【上杉治憲】より

…【横山 昭男】 上杉の家督をついだとき,春日大明神に奉納した誓詞に,〈受けつぎて国のつかさの身となれば忘るまじきは民の父母〉という歌を書きつけた鷹山は,江戸時代中期の代表的な名君として,和歌山の徳川治貞,熊本の細川重賢らと並び称された。その名はすでに江戸時代後期から高く,明治時代に内村鑑三がすぐれた日本人5人を選んでその事跡を世界に紹介しようとして著した《代表的日本人》にも,卓越した封建領主として書かれている。鷹山が藩政改革に際して,率先して粗衣粗食に耐えたこと,師の細井平洲に対して終始門弟としての礼を守ったことなどの逸話は国定教科書に掲載され,鷹山は修身教育上の模範的な人物として広く知られた。…

※「代表的日本人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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