2007年米国の動向(読み)2007ねんべいこくのどうこう/にせんななねんべいこくのどうこう

知恵蔵 「2007年米国の動向」の解説

2007年米国の動向

○ ヒラリーVS.バラク 2007年12月現在、米国の大統領選は熱気を帯びている。08年11月の選挙は民主党の勝利が予想されるが、前大統領夫人のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)とバラク・オバマ(Barack Obama)の民主党の両上院議員が熾烈(しれつ)な指名争いを展開している。いずれの候補が選ばれても米国史上初の女性大統領か、初のアフリカン・アメリカン大統領の誕生となる。 ○ まだ続くイラク戦争 イラク戦争はまだ終わらない。治安がある程度改善された地区があるものの、いまだ治安が悪いなかで、軍隊派遣国の漸次撤退に伴い、イラク政府に治安を移譲されつつあるが、果たしてイラク政府がイスラム教シーア派スンニ派、それにクルド人との対立や内部抗争による暴力を有効に制御できるかが注目される。さらにイラク北部の武装組織クルド労働者党(PKK)に対して、トルコ政府が越境して武力による攻撃を行っていることも、イラク情勢をより複雑なものにしている。 ○ パレスチナ和平? 2期目も残りわずかとなったブッシュ政権は北朝鮮の核の無能力化とパレスチナ和平を目指しているが、2008年11月の大統領選挙までになんらかの成果を上げ、選挙を共和党有利に導く梃子(てこ)にできるかが、注目される。北朝鮮に対しては6者協議の枠組みの中で様々な問題を解決する必要があり、またパレスチナ問題では、自治評議会選挙に圧勝し、その後ガザ地区を武力制圧したハマスを除外したままで、有効な和平交渉に持っていけるのか、疑問視する声も多い。 ○ 米国経済の動向 低所得者向けの住宅ローン(サブプライムローン)により、米国の金融機関のみならず、世界中の金融機関が多額の負債を抱え、その多くが苦況に立たされている。そのため連邦準備制度理事会(FRB)は再三にわたり公定歩合を引き下げているが、それによって米国経済、ひいては世界経済が苦境を脱し、好況に向かうのか、その動向を見守る必要があろう。

(細谷正宏 同志社大学大学院アメリカ研究科教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報