チャート(読み)ちゃーと(英語表記)chert

翻訳|chert

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャート」の意味・わかりやすい解説

チャート
ちゃーと
chert

珪(けい)質の堆積(たいせき)岩の一種で、ほとんど生物源のシリカSiO2二酸化ケイ素)からなる細粒・緻密(ちみつ)な硬い岩石。普通乳白色で、含まれる不純物により、灰、黒、青、緑、茶、赤などいろいろな色調のものがあるが、一般に透明感がある。硬くて割ると貝殻状断口を示すことが多い。玉髄(ぎょくずい)(カルセドニー)質あるいは細粒で等粒状の石英の集合からなり、微粒の絹雲母(きぬうんも)、緑泥石赤鉄鉱などをわずかに含んでいる。産状から層状チャートと団塊状チャートに分けられるが、層状チャートが大規模な地層として広く分布するのに対し、団塊状チャートは石灰岩などの中に小塊として産出するのみで、地質学的には層状チャートが重要である。層状チャートは、厚さ数センチメートルの珪質の単層が数ミリメートルの泥質の薄層を挟んで規則的に繰り返して積み重なった地層で、露頭では縞(しま)状にみえる。層状チャートは、かつては海水から無機化学的に沈殿して形成されたと考えられていたが、ほとんどすべてのものが珪質の骨格や殻をもつ放散虫や珪質海綿あるいは珪藻遺骸(いがい)が集積してできたもので、一種の生物岩ということができる。礫(れき)や砂のような粗粒砕屑(さいせつ)物をまったく含まないことから、陸域から遠く離れた海洋底で形成されたと考えられている。日本では、北海道から沖縄まで、古生代後期や中生代付加体とよばれる地質体の中によくみられ、ほとんどが砕屑岩に取り囲まれた異地性の地塊をなしていることから、海洋プレートの沈み込みに伴って海側から付け加えられたものと解釈されている。代表的に発達している地域として、北部北上山地、足尾山地、関東山地、美濃(みの)、丹波(たんば)地方があげられる。チャートが再結晶してかなり純粋な石英の集合体になったものは、珪石として耐火れんがの原料として利用される。

[斎藤靖二]

『水谷伸治郎・斎藤靖二・勘米良亀齢著『日本の堆積岩』(1987・岩波書店)』『勘米良亀齢・水谷伸治郎・鎮西清高編『岩波講座地球科学5 地球表層の物質と環境』(1987・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チャート」の意味・わかりやすい解説

チャート
chert

堆積岩の一種。緻密な潜晶質の岩石で主成分は二酸化ケイ素から成り,少量の三酸化二鉄,酸化アルミニウム,酸化マンガンなどを含む。色は変化に富み,赤,緑,黒,白色などを呈する。薄く成層した板状チャート,色が少しずつ変化した縞状チャート,無層理の塊状チャートなどや,石灰岩などの中に団塊状に含まれるものなどがある。成層したものには激しく層内褶曲を示すことがある。放散虫,海綿の骨片,コノドントなどの化石を含むことが多い。チャートには火打石,角岩など種々の同義語があり,特定の国や時代のチャートだけに適用される固有名称も多い。チャートは石器時代の人類の主要な工具であったし,17~18世紀には火打銃として軍用に使われた。成因は完全には解明されていない。海底火山活動や陸水によってもたらされたケイ酸分が,遠洋で化学的に沈積したとみられるものが多い。日本の古生界や中生界に多いが,硬く,浸食に強いので急峻な山や峡谷を形成する。各地でマンガン鉱床を伴うことがある。

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