日本大百科全書(ニッポニカ) 「CA19-9」の意味・わかりやすい解説
CA19-9
しーえーないんてぃーんないん
糖鎖抗原19-9(carbohydrate antigen 19-9)の略で、腫瘍(しゅよう)マーカーの一つ。各種臓器の上皮細胞膜表面にみられるが、とくに膵管(すいかん)、胆管、胆嚢(たんのう)に局在しており、がん化に伴い大量に産生されるようになる。血液検査では、膵がん・胆管がん・胆嚢がんで80~90%、胃がん・大腸がんで30~50%の陽性率を示すが、早期のがんでは血中濃度の上昇を認めないことが多く、早期発見のためのスクリーニングには不向きである。
胆管炎、膵炎、胃炎、肝炎、肝硬変などの肝胆道系疾患や、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などの婦人科疾患、慢性気管支炎、肺結核などの呼吸器疾患、糖尿病などの良性疾患でも上昇することがあり、この場合は偽陽性(がんがないのに、検査で陽性)となる。
消化器がん以外に、肺がん、卵巣がん、子宮体がんなどでも上昇がみられることから、画像診断や病理診断と組み合わせて幅広く利用される腫瘍マーカーである。また、再発や転移の有無など、臨床経過のモニタリングに活用されている。
なお、日本人に1割ほど存在するルイス血液型陰性者では、CA19-9をつくることができないため、がんを有していても値が上昇することはない。
[渡邊清高 2019年5月21日]