CA19-9(読み)しーえーないんてぃーんないん

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「CA19-9」の解説

CA19-9

基準値

37Ug/mℓ以下(EIA法)

膵臓がんで高値に

 自覚症状が少なく、早期発見が難しいすいがんの診断としては、逆行性膵胆管造影(→参照)や腹部超音波(→参照)、腹部CT(→参照)などが行われています。血液検査では膵酵素のアミラーゼ(→参照)、リパーゼ(→参照)などとともに、腫瘍マーカーとしてCA19-9を測ります。

 CA19-9は、がん化した膵細胞がたくさんつくり出すため、膵臓がんで特異的に上昇します。しかし、全例が高値になるわけではなく(80%の陽性率)、また病気が進行しないと高値にならないこともあります。そこで膵臓がんでは、CA19-9だけでなくCEAとあわせて測定すると正診率(正しい診断の比率)は上昇します。

 CA19-9は、ルイス抗原(血液型の表現のひとつ)が陰性の人(日本人では5~6%)の場合は、膵臓がんでも高値になりません。この場合は、ほかの腫瘍マーカー(CEAやDupan-2、Span-1)によって検査します。

 膵臓がんの症状として血糖(→参照)が高くなることがあります。糖尿病を治療している場合で、血糖のコントロールが急に悪くなったときは膵臓がんも疑い、CA19-9の測定を含め、一度はがんのチェックをすべきです。

胆道がんでも上昇

 CA19-9は、消化器系がんを中心とした腺細胞由来のがんで高値になり、膵臓がんのほか胆道がんで高率に陽性になりますが、大腸がんの陽性率は高くありません。

 なお、腺細胞とは消化器や生殖器一部分をつくっている細胞のことで、一方、食道や皮膚、粘膜気管支などをつくっている細胞を扁平上皮細胞といいます。

検査値からの対策

 CA19-9が2倍以上の高値のときは、膵臓をはじめとする消化器系の臓器など、腺細胞でできている臓器にがんがあるかどうかを、腹部超音波や腹部CTなどで精密検査します。扁平上皮細胞のがんでは、ほかの腫瘍マーカー(SCCなど)が上昇します。

 CA19-9が2倍以内の上昇でも、がんの存在を疑って検査を進めますが、がん以外でもこの程度は上昇することがあり、がんが見つからないときは経過を観察します。がんによってCA19-9が上昇するときは、経時的に上昇することも特徴のひとつです。

疑われるおもな病気などは

◆高値→がん:膵臓、胆道胆嚢たんのう大腸、胃、肝臓

   その他:膵炎、膵嚢胞、胆石など

医師が使う一般用語
「シーエージューキューのキュー」「シーエーナインティーンナイン」=colorectal carcinoma antigen(消化器がん関連抗原)19-9の略CA19-9から

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「CA19-9」の意味・わかりやすい解説

CA19-9
しーえーないんてぃーんないん

糖鎖抗原19-9(carbohydrate antigen 19-9)の略で、腫瘍(しゅよう)マーカーの一つ。各種臓器の上皮細胞膜表面にみられるが、とくに膵管(すいかん)、胆管、胆嚢(たんのう)に局在しており、がん化に伴い大量に産生されるようになる。血液検査では、膵がん・胆管がん・胆嚢がんで80~90%、胃がん・大腸がんで30~50%の陽性率を示すが、早期のがんでは血中濃度の上昇を認めないことが多く、早期発見のためのスクリーニングには不向きである。

 胆管炎、膵炎、胃炎、肝炎、肝硬変などの肝胆道系疾患や、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などの婦人科疾患、慢性気管支炎、肺結核などの呼吸器疾患、糖尿病などの良性疾患でも上昇することがあり、この場合は偽陽性(がんがないのに、検査で陽性)となる。

 消化器がん以外に、肺がん、卵巣がん、子宮体がんなどでも上昇がみられることから、画像診断や病理診断と組み合わせて幅広く利用される腫瘍マーカーである。また、再発や転移の有無など、臨床経過のモニタリングに活用されている。

 なお、日本人に1割ほど存在するルイス血液型陰性者では、CA19-9をつくることができないため、がんを有していても値が上昇することはない。

[渡邊清高 2019年5月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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