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肝炎 かんえん hepatitis

翻訳|hepatitis

10件 の用語解説(肝炎の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

肝炎
かんえん
hepatitis

肝臓の炎症性疾患の総称。原因はさまざまであるが,約 90%はウイルスの感染によって起るウイルス性肝炎で,アルコールや薬物によって肝炎を起こすのは 10%前後にすぎない。そのほか薬物性肝炎自己免疫性肝炎などがある。

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デジタル大辞泉の解説

かん‐えん【肝炎】

肝臓の炎症性疾患の総称。ウイルス性が多いが、薬物・毒素の中毒や細菌などによるものもある。食欲不振・倦怠感・吐き気黄疸(おうだん)などの症状がみられる。急性と慢性とがあり、特に症状の激しいものを劇症肝炎という。肝臓炎。→ウイルス性肝炎

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百科事典マイペディアの解説

肝炎【かんえん】

肝臓の炎症性疾患。ウイルス性肝炎,アルコール性肝炎,薬物性肝炎などがあるが,多くはウイルス性肝炎である。ウイルス性肝炎は原因ウイルスによりA型肝炎B型肝炎C型肝炎に分けられる(D型,E型もあるが日本ではまれ)。
→関連項目アルコール性肝障害ウイルス病学校伝染病癌ウイルス感染症予防法肝不全γ-GTP劇症肝炎血液製剤自己血輸血利胆薬

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とっさの日本語便利帳の解説

肝炎

ウイルスによるもの以外に薬剤性肝炎、劇症肝炎、自己免疫性肝炎などもある。ウイルス性肝炎ではA型、B型、C型、D型、E型が知られている。B型、C型は慢性肝炎に移行し、肝硬変あるいは肝臓がんになる。

出典|(株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」
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栄養・生化学辞典の解説

肝炎

 肝臓の炎症.急性肝炎と慢性肝炎がある.アルコール性のもの,ウイルスによるもの,薬物によるものなどがある.

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生活習慣病用語辞典の解説

肝炎

肝臓に生じた炎症の総称のことです。主な原因は、ウイルス、アルコール、薬物、毒物があります。慢性と急性に分けることができ、急性の場合、発熱、黄疸、吐き気、食欲不振、倦怠感などの症状がでます。慢性でも同様の症状がゆっくりと出ることもありますが、無症状のことも多いです。

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家庭医学館の解説

かんえん【肝炎】

 肝炎とは、なんらかの原因で、肝臓(かんぞう)に炎症がおこった状態をいいます。
 肝臓を顕微鏡で見ると、正常な場合は血液の通り道である類洞(るいどう)に接して肝細胞(かんさいぼう)が規則正しく並んでいます。ところが炎症がおこると、肝細胞の周囲に白血球(はっけっきゅう)系の細胞が入り込み、肝細胞が壊れます。この状態が1~2か月以内で治るものを急性肝炎(きゅうせいかんえん)、6か月以上続くものを慢性肝炎(まんせいかんえん)と分類しています。
 急性肝炎の場合、原因となる肝炎ウイルスに感染し、潜伏期の後、かぜに似た症状に続き、黄疸(おうだん)などの症状が急に出現して肝炎と気づきます。
 慢性肝炎は、はっきりした症状が出ないことが多く、検診などで見つかることがあり、定期的に健康診断肝機能検査(かんきのうけんさ)など)を受ける必要があります。肝臓は、食べ物から吸収した栄養素を貯蔵(ちょぞう)する倉庫の役割、その栄養素からからだに必要な成分をつくる工場の役割、不必要なものを胆汁(たんじゅう)に流してしまう排泄(はいせつ)の役割、体内に入ってきた毒物や薬物を解毒(げどく)する役割などを担っています。ところが肝炎がおこると、これらのはたらきが低下してきます。
 とくに慢性肝炎が長びくと、これらのはたらきは徐々に低下し、肝臓の中に線維(せんい)がのびて肝細胞のかたまりを取り囲み、肝臓の構造をまったく変えてしまいます。これが肝硬変(かんこうへん)です。
 肝硬変が進んだり、急激に大量の肝細胞が死んでしまう劇症肝炎(げきしょうかんえん)では、肝臓のはたらきが保てなくなって、肝不全(かんふぜん)という重篤(じゅうとく)な状態になります。
肝炎の原因
肝炎ウイルス
日常生活の注意

肝炎(かんえん)の原因
 肝炎はいろいろな原因でおこります。日本でもっとも多いのは肝炎ウイルスに感染しておこるウイルス肝炎です。A型、B型、C型、D型、E型、G型、TT型があり、それぞれの型の肝炎ウイルスによってひきおこされます。
 A型とE型はおもに食物を介して経口感染(けいこうかんせん)します。B型、C型、D型、G型は血液を介して感染し、慢性化することがあります。TT型は血液感染と経口感染とがあります。
 どの型の肝炎も、場合によっては劇症肝炎(急激に肝細胞が大量に破壊される重症の肝炎)をおこし、肝不全で亡くなることもまれにあります。ただし、D型やE型肝炎の日本での発症はきわめて少なく、E型肝炎は蔓延地(まんえんち)への旅行後に発症した例がまれに報告されます。
 その他には、アルコールの飲み過ぎで肝臓機能が低下するアルコール性肝障害(せいかんしょうがい)、毒物で肝臓が障害される中毒性肝障害(ちゅうどくせいかんしょうがい)、薬物が合わなくて肝臓が障害される薬剤性肝障害(やくざいせいかんしょうがい)などがあります。

肝炎(かんえん)ウイルス
●A型肝炎ウイルス
 A型肝炎ウイルスは、下痢(げり)などをおこすウイルスに似ていて、RNA遺伝子をもった、直径27~28nm(ナノメートル)(1nmは100万分の1mm)の大きさのウイルスです。ピコルナウイルス属の1つです。
 A型肝炎は、感染者の糞便(ふんべん)から出たA型肝炎ウイルスが、まわりまわって口から入って感染(経口感染)することで発症します。慢性化せず、急性肝炎をおこして1~2か月で治ります。
●B型肝炎ウイルス
 B型肝炎ウイルスは、不完全な二重鎖のDNA遺伝子をもつ直径42nmのウイルスです。
 ウイルスのいちばん外側はHBs抗原(こうげん)(表面抗原)というたんぱく質でおおわれており、その中にHBc抗原(コア=芯抗原(しんこうげん))やHBe抗原(外殻抗原(がいかくこうげん))という別のたんぱく質と、ウイルス遺伝子を完成させるDNAポリメラーゼという酵素(こうそ)などがあります。
 このウイルスに感染した人の血液中には、完全型のデーン粒子(りゅうし)と呼ばれるウイルス粒子と、HBs抗原たんぱくだけの粒子(小型球形粒子(きゅうけいりゅうし)や管状粒子(かんじょうりゅうし))が見つかります。HBs抗原だけの粒子にはウイルス遺伝子が入っていないため、感染性はありません。
●C型肝炎ウイルス
 C型肝炎ウイルスは、1本鎖RNA遺伝子をもった直径約55nmの粒子です。このウイルスの特徴は、ウイルス遺伝子がたびたび変異(へんい)して、いちばん外側の表面抗原たんぱくが次々と変わってしまい、捉えどころがなくなってしまうことです。そのためからだの中で免疫反応(めんえきはんのう)がおこっても中和抗体(ちゅうわこうたい)ができず、持続感染(じぞくかんせん)(ウイルスが消滅(しょうめつ)せず持続する)しやすいのです。
 中和抗体というのは、ウイルスの外側のたんぱく質に対してできる抗体のことで、この抗体がしっかりはたらけば、ウイルスは破壊されてしまいます。
 A型肝炎ウイルスではHA抗体が、B型肝炎ウイルスではHBs抗体が中和抗体で、これらの抗体がからだの中にできれば、原則としてウイルスは消滅しますが、C型肝炎ウイルスでは中和抗体がきわめてできにくいのです。
●その他の肝炎ウイルス
 D型肝炎ウイルス(別名デルタウイルス)は、DNA遺伝子をもった単純なウイルスで、このウイルスは、いちばん外側の殻をB型肝炎ウイルスのたんぱくを借りてつくるため、B型肝炎ウイルスに感染している人でしか増殖(ぞうしょく)できません。イタリアを中心に報告されていますが、日本ではほとんどみられません。
 E型肝炎ウイルスは、A型肝炎ウイルス同様経口感染します。このタイプも日本ではまれにしかみられません。
 G型肝炎ウイルスはC型肝炎ウイルスに近い種類と考えられていますが、中和抗体はしっかりできるようです。
◎ウイルスマーカー
 通常は、肝炎ウイルスに感染すると、最初に血液中にウイルス表面たんぱく(抗原たんぱく)が見つかるようになります。そうすると、からだは異物(いぶつ)が体内に入ってきたと感じ、排除しようとします。そのときできるのが、ウイルスの抗原たんぱくに対する抗体(免疫(めんえき)グロブリン)です。したがって、感染後しばらくすると、血液中にウイルス抗体が見つかるようになります。
 抗体のなかで、ウイルスを壊す力をもった抗体が中和抗体(ちゅうわこうたい)で、中和抗体ができるにしたがって、ウイルスがからだの中から消えていきます。
 抗体ができる過程をみていくと、免疫グロブリンにはいろいろのタイプがあります。最初にできるタイプがIgM型(免疫グロブリンM型)抗体で、その後、IgG型(免疫グロブリンG型)抗体がつくられます。つまり、ウイルスが初めてからだに侵入したときはIgM型の抗体がつくられますが、しばらくたつとIgG型の抗体しかつくられなくなります。
 C型肝炎ウイルスのように捉えどころのない表面抗原たんぱくをもったウイルスの存在は、血液中にあるそのウイルス遺伝子をみつけて確認します。採取した血液中のごく微量のウイルス遺伝子は、遺伝子工学的に100万倍以上に増幅して目に見えるようにされます。この方法をPCR法といいます。
 以上のように、からだの免疫のしくみを利用したり、遺伝子工学の助けを借りて、どのような型のウイルスに感染しているか、肝炎のどんな時期なのかを突きとめるための検査がウイルスマーカー検査です。
◎ウイルスキャリアについて
 B型やC型の肝炎ウイルスは、数十年にわたってからだの中に存在し続け、持続感染の状態をもたらします。
 成人期にB型肝炎ウイルスに感染しても、中和抗体ができるため持続感染とはなりませんが、乳幼児期など、からだの免疫のしくみが発達していない時期に感染した場合は中和抗体ができず、持続感染します。成人でも、免疫力の低下した時期にはこのような感染をおこす可能性があります。
 C型肝炎ウイルスの場合は、成人期に感染しても中和抗体がうまくできないため、持続感染をおこします。
 このように、体内にウイルスを持続的にもつ人(またはその状態)のことをウイルスキャリアと呼びます。そのなかで、GOT、GPT値が上昇せず、肝炎症状がないキャリアのことを無症候性(むしょうこうせい)キャリアといいます。
 日本人の2~3%はB型肝炎ウイルスキャリアだといわれていますが、その原因のほとんどは母子感染(ぼしかんせん)(この項目の母子感染)です。B型肝炎ウイルスキャリアは、数十年間は無症候性で経過した後に、20~30歳代で多く慢性肝炎として発症することが知られています。
 C型肝炎ウイルスは、おもに輸血によって感染するウイルスですが、鍼治療(はりちりょう)や入れ墨(ずみ)などでも感染します。しかし、約3割強は心あたりもなく、知らないうちに感染した人たちです。症状がないため、多くの人は血液検査でウイルスマーカーを調べて、初めてキャリアであることがわかります。
◎母子感染(ぼしかんせん)
 ウイルスをもつ母親から生まれた子どもにウイルス感染が生ずることを母子感染といいます。B型肝炎ウイルスがその代表で、これは、胎児(たいじ)が産道(さんどう)を通って生まれるときに大量の母親の血液を浴びるためといわれています。
 2~3歳ぐらいまでの子どもも、免疫力がしっかりしていないために、感染するとキャリアになります。
 母子感染は母親の血液中のウイルス量が多い場合におこります。B型肝炎ウイルスの場合、ウイルスの増殖が盛んになるとHBe抗原が出てきます。したがって、検査をしてHBe抗原が陽性である母親から生まれた子どもはB型肝炎ウイルスキャリアになりやすいのです。
 同様のことは、C型肝炎ウイルスでもいえます。母親の血中ウイルス量が多い場合、10%弱の割合で母子感染が成立することがわかってきました。
 なお通常、父親から子どもへの感染はほとんどありません。
◎感染予防
 母子感染を予防するためには、子どもを産む前に母親の血液中のウイルスをなくするか、量を減らすことです。そのためには、キャリアの母親は妊娠前に抗ウイルス療法を行ない、ウイルスをなくすのが最善です。
 B型肝炎ウイルスキャリアの女性が妊娠したときは、出産直後、子どもに免疫グロブリンとB型肝炎ウイルスワクチンを接種する方法があります。これによってキャリアからの出生児のHBs抗原陽性率は、現在では0.1%以下に激減しています(以前は1%)。
 C型肝炎ウイルスの場合は、ワクチンがないため、妊娠前にインターフェロン治療などの抗ウイルス療法を行なう以外、今のところ方法がありません。

日常生活の注意
 B型とC型の肝炎ウイルスは血液から感染します。日常生活で簡単に他人に感染することはほとんどありませんが、ある程度の注意は必要です。
 たとえば、ピアス、入れ墨、鍼治療などの際には、使い捨てか個人専用の器具を使いましょう。カミソリや歯ブラシの共用もお勧めできません。
 B型肝炎ウイルスは性行為でも感染することがあります。ヒト免疫不全(めんえきふぜん)ウイルス(HIV=エイズウイルス)と同様、ウイルス感染症が蔓延(まんえん)している国や地域で現地の人や不特定多数の相手と性交渉をもつことは慎むべきです。
 C型肝炎ウイルスの性行為による感染はほとんどないといわれています。
 なお、ウイルスキャリアになると献血(けんけつ)はできません。また、けがで出血した場合、その始末は自分で行なうなど、他人への感染に注意すべきです。

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世界大百科事典 第2版の解説

かんえん【肝炎 hepatitis】

肝臓の炎症性疾患。肝炎と名がつく肝臓の疾患には,ウイルス性肝炎(急性肝炎),劇症肝炎,慢性肝炎,ルポイド肝炎,アルコール性肝炎や薬物性肝炎などがある。肝炎は,(1)肝細胞の変性,壊死(肝細胞の破壊),(2)肝細胞の機能障害,(3)間葉系反応(細胞浸潤や繊維増生),(4)胆汁鬱滞(うつたい)(胆汁の排出障害,黄疸)などの組織変化の組合せで起こる。 ウイルス性肝炎は肝炎全体の約90%を占め,肝細胞の変性・壊死がおもな病変で,胆汁鬱滞は副次的な病変である。

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大辞林 第三版の解説

かんえん【肝炎】

肝臓の炎症性疾患の総称。病因によってウイルス性・中毒性・自己免疫性に分かれ,また,経過により急性と慢性に分かれる。肝臓炎。

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

肝炎
かんえん

肝臓の炎症を意味し、おもに肝細胞が壊される病態である。肝炎の原因の多くは肝炎ウイルスである。肝炎ウイルス以外には、一般ウイルス、アルコール、薬物と自己免疫性機序による肝炎がある。肝炎は経過から、急性肝炎と慢性肝炎に分けられる。6か月以上炎症が持続したときに慢性肝炎といい、急性肝炎から移行することもある。急性肝炎のなかには、発症後8週間以内に急速に肝不全と意識障害を起こし、その多くが死亡する肝炎があり、劇症肝炎という。肝炎ウイルスには、A、B、C、D、E型がある。A型肝炎ウイルスHAV)とE型肝炎ウイルスHEV)は、経口感染で、急性肝炎を起こすが、慢性肝炎にはならない。E型肝炎ウイルスはタイ、インドなどに多く発生している。日本にも常在する。B、C、D型肝炎ウイルスは血液で感染し、急性肝炎を起こすとともに、感染が持続し、慢性肝炎となる。BとC型肝炎が持続すると、慢性肝炎、肝硬変へと進行し、肝細胞癌(肝癌)を合併する。D型肝炎ウイルス(HDV)はB型肝炎ウイルスHBV)に感染している人に感染する。日本ではきわめてまれに発生する。肝炎を起こす一般ウイルスには、EB(Epstein-Barr)ウイルス、サイトメガロウイルスヘルペスウイルスなどがある。肝炎ウイルスによる肝炎に比べて肝障害の程度が軽く、急性肝炎として治癒する。[恩地森一]

急性肝炎


A型肝炎
A型肝炎は流行性肝炎とも伝染性肝炎ともいわれている。A型肝炎ウイルスは汚染された飲食物を介して経口的に感染する。ウイルスは発症早期の患者の糞便(ふんべん)中に証明される。冬から春に好発し、ときに集団発生する。ウイルスに感染してから2~6週間後に発病し、発熱、全身倦怠(けんたい)感、嘔気(おうき)、嘔吐(おうと)、腹痛、食欲不振が出現する。発症後数日から数十日のうちに黄疸(おうだん)が出現することが多い。合併症としてはまれに急性腎不全、溶血性貧血、低血糖発作などがある。診断はIgM型A型肝炎ウイルス抗体を血中で検出することによる。IgG型のA型肝炎ウイルス抗体は過去の感染を意味している。
 遷延することはあるが、慢性化はしない。予後はよく、大部分は1~3か月で完治する。まれに劇症肝炎になることがある。特効薬はなく、安静とバランスのとれた食事で治療する。ワクチンがあり、予防接種が可能である。東南アジアなどの流行地に行く際には接種が勧められる。γ(ガンマ)‐グロブリン(免疫グロブリン)は接種後ただちに予防効果があるが、その有効期間は3か月間程度である。[恩地森一]
B型急性肝炎
B型急性肝炎は血清肝炎ともいわれた。もっとも多い感染経路は、輸血、母子感染、性交などであるが、原因不明の散発例もある。母子感染のほとんどは出産時に産道で感染する。輸血による感染は輸血用血液の肝炎予防検査により激減し、日本では例外的に発生するのみである。針刺し事故などの医療事故で発生することもある。ウイルスに感染してから1~6か月で発症する。A型肝炎と同様の症状がみられるが、それよりも軽い。まれに血尿、タンパク尿などの腎障害を合併する。診断にはIgM型のB型肝炎ウイルスコア抗体(HBc抗体)がもっとも適している。B型肝炎ウイルス表面抗原(HBs抗原)やHBV‐DNAはB型肝炎ウイルス存在の証明となる。
 成人で感染した人の予後は比較的良好である。原則として慢性肝炎にはならないが、B型肝炎ウイルスの遺伝型のうち、A型は20%近くが成人初感染でも慢性化する。まれに、ウイルスが持続感染している人(キャリア)が急性肝炎として発症することがある。母子感染などで幼少期に感染した人は慢性肝炎となり肝硬変、肝細胞癌と進展する。B型肝炎の数%に劇症肝炎が起こる。強力な免疫抑制剤の使用により、治癒していたB型肝炎が増悪することがある(de novo肝炎)。
 ウイルスの増殖を抑える薬として、インターフェロン(ウイルス抑制因子)、エンテカビルやラミブジン(逆転写酵素阻害剤)があるが、発病したときにウイルスの増殖は停止ないしは低下していることが多く、使用されることはまれである。治療としては、安静と食事療法である。
 予防には高力価ガンマグロブリンとワクチンがある。即効を期待するときには高力価ガンマグロブリンを使用するが効果は3か月間以内である。B型肝炎ウイルスをもっている母親から生まれた子供、B型肝炎ウイルスをもっている人の家族や医療従事者などはワクチン接種を行い、感染を予防する。[恩地森一]
C型急性肝炎
もっとも多い感染経路は輸血であるが、刺青(いれずみ)や医療事故であることもある。原因不明の散発例もある。輸血による感染は輸血用血液の肝炎予防検査により激減している。まれにA型肝炎と同様の症状がみられることもあるが、無症状のことが多い。まれに腎障害を合併する。C型肝炎ウイルス(HCV)感染の診断は、HCV‐RNAやC型肝炎ウイルス抗体で行う。発病初期には抗体検査では証明できないことがある。慢性化することが特徴である。感染後数十年して急速に悪化し、肝硬変や肝細胞癌に進展する。
 安静と食事療法で急性肝障害は治癒する。慢性化の予防にはインターフェロンが有効で、C型急性肝炎で持続感染が疑われる際にインターフェロンで治療する。ワクチンはなく、ガンマグロブリンも予防効果はない。[恩地森一]

劇症肝炎

ウイルス肝炎や薬物性肝障害の経過中8週間以内に重症化し、急激に高度の肝機能障害と意識障害が起こる病気である。急性肝炎の1~2%が劇症肝炎に移行するとされ、日本では年間約450人が発病している。
 原因は肝炎ウイルスが多く、そのなかでもB型肝炎ウイルスと原因不明が多い。ほかには自己免疫性肝炎、E型肝炎、A型肝炎、薬物としてはハロタン、アセトアミノフェン、糖尿病用薬などがある。急激に悪化する機構については解明されていない。症状としては、急性肝炎の一般的な症状が顕著となるとともに、出血傾向、意識障害(肝性昏睡)、腹水や腎不全が出現する。経過の比較的に長いときには黄疸が高度となる。発症後11日以後に肝性昏睡が出現する劇症肝炎亜急性型では原因不明が40%を超えている。
 抗ウイルス剤や免疫抑制剤による治療、血漿(けっしょう)交換、交換輸血、持続血液透析やその他の対症療法が行われている。予後はきわめて悪く、劇症肝炎すべての救命率は約30%で、発症後10日以内に肝性昏睡が出現する劇症肝炎急性型では50%前後で、亜急性型では20%以下である。肝臓移植が有効で救命率があがっている。[恩地森一]

慢性肝炎

6か月以上にわたり持続した肝炎をいう。肝炎が持続したことは、一般肝機能検査、とくにトランスアミナーゼ(AST、ALT)の異常が長く続いたことや膠質(こうしつ)反応(ZTT、TTT)、ガンマグロブリンの高値、脾臓(ひぞう)の腫大(しゅだい)などで推測できる。確実には、腹腔(ふくくう)鏡検査で肝の表面を観察したり、肝生検による病理組織学的検査により証明される。肝細胞の小壊死(えし)巣、門脈域への円形細胞浸潤と線維化で診断できる。自覚症状はほとんどなく、あっても全身倦怠感や易疲労感などである。慢性肝炎の原因は、BとC型肝炎ウイルスの持続感染、D型肝炎ウイルス、自己免疫性肝炎と薬物性肝炎がある。BとC型肝炎ウイルスは慢性肝炎の原因として多く、また肝細胞癌を合併することからも重要である。[恩地森一]
B型慢性肝炎
B型慢性肝炎は日本の慢性肝炎の約15%を占めている。B型肝炎ウイルスに幼少時に感染し、持続感染した人(キャリア)に生じる。成人の初感染でも、まれに持続感染し、慢性肝炎となる。B型肝炎ウイルスが感染していることは、HBs抗原陽性、HBc抗体が高力価陽性であることから診断される。HBe抗原(B型肝炎ウイルスのコア粒子内のタンパク)が陽性であるとウイルス量が多く、肝炎の程度は高い。ウイルス量は、HBV‐DNAで知ることができる。HBe抗原が消え、HBe抗体が陽性になる(セロコンバージョン)と肝炎は終息する。まれにHBe抗体陽性でもトランスアミナーゼが異常値であることがあるが、その場合には血中のHBV‐DNAが陽性である。一般肝機能検査で肝炎の程度を推測できるが、肝生検は確実な診断となる。
 HBe抗原を陰性化させる治療として、インターフェロン、エンテカビルやラミブジン投与が行われている。肝細胞癌の合併を減らすことができる。[恩地森一]
C型慢性肝炎
日本には50歳以上を中心におよそ180万人のC型肝炎ウイルスの持続感染者がいるとされている。戦争を体験した国に多く、日本では太平洋戦争後の混乱期に、アメリカではベトナム戦争当時に流行した。日本の慢性肝炎、肝硬変と肝細胞癌の80%以上がC型肝炎ウイルスによる。
 C型慢性肝炎はB型のそれに比べて臨床症状や検査成績で大きな差異はないが、黄疸が出現することが少なく、トランスアミナーゼの上昇の程度も比較的に軽微である。肝硬変、肝細胞癌と進展しても肝機能検査の異常は続き、自然治癒することはきわめてまれである。
 薬物としてはインターフェロンがあり、完全に治癒することが期待できる。インターフェロンで完治する人は約70%である。完治した人からの肝細胞癌の発生は抑えられている。インターフェロンの有効性を決める因子としては以下の項目が重要視されている。
(1)ウイルスの量 少ないほど有効で血液1ミリリットル中10万以下(5logIU/ml以下)の場合に効果が大きい。
(2)ウイルスの型 2b>2a>1bの順に有効である。
(3)肝生検で線維化が高度であれば有効性が低い。
(4)高齢者では有効性が低い。
(5)インターフェロンにリバビリン(抗ウイルス薬)を一緒に使用すると効果がよくなる。
 インターフェロン療法の適応がない人や有効でなかった人には、グリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸、瀉血(しゃけつ)などを使用してトランスアミナーゼを下げておくことが、肝硬変への進展と肝細胞癌の合併を抑制するうえで重要である。[恩地森一]

アルコール性肝炎

日本では増加傾向にある。常時飲酒をしている人が急激に飲酒量を増やしたときに発症する。腹痛、発熱、黄疸をおもな症状とし、白血球増加、血清AST、γ‐GTPとアルカリフォスファターゼ(ALP)の上昇がみられる。肝の病理組織的検査では肝細胞の変性、壊死と風船化、線維化、マロリー小体や好中球の浸潤が特徴的である。アルコール性肝炎のなかに、肝性昏睡、肺炎、急性腎不全、消化管出血、エンドトキシン血症などを伴い、断酒にもかかわらず、肝腫大は持続し、多くは1か月以内に死亡する重症型が存在する。また血液凝固検査におけるプロトロンビン時間(血液凝固因子を加えたときの血漿が固まる時間)が50%以下となる。アルコール性肝炎の治療は断酒につきる。アルコール依存症の治療も必要である。重症型は劇症肝炎の治療に準じるが予後はきわめて悪い。[恩地森一]

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

飲酒がないにもかかわらずアルコール性肝炎に類似した進展を示す疾患である。脂肪肝に加えて、炎症(肝炎)があって線維化がみられる。原因は活性酸素による酸化ストレス、インスリン抵抗性、サイトカインの放出などのストレスによるとされている。メタボリック症候群の肝臓の病型と考えられる。自覚症状はほとんどない。肝機能検査でみつかることがほとんどである。ASTとALTが軽度上昇する。AST/ALT比は1.0以下。腹部超音波検査やCTにより脂肪肝の診断ができる。NASH(ナッシュ)の診断は肝生検によって、肝細胞への脂肪沈着、風船様の肝細胞変化、アルコール硝子体、好中球浸潤や線維化などの所見で診断する。食生活の改善と運動療法が基本。肝臓病に対する薬が投与されることもある。肝炎から肝硬変、肝癌へと進展することがあるため、肝機能検査と画像検査を定期的にする必要がある。

薬物性肝炎

薬物性肝障害ともいう。薬物による肝障害は急性に経過し、薬物の使用中止で軽快するが、長期使用すると慢性肝炎や重症肝炎に移行することもある。誰にでも肝障害を起こす薬物による肝障害(中毒性肝障害)と、特異体質によって特定の人に起こる肝障害があり、それには薬物アレルギーによるものと薬の特異な代謝経路をもつためによる場合がある。また、特殊な場合として、腫瘍の形成や肝臓の血管障害によることがあるが、まれである。一般にみられる薬物性肝障害は特異体質による。
 原因薬物としては、抗生物質、解熱・鎮痛薬、精神・神経用薬が多い。病型としては、通常のウイルス肝炎と類似した肝炎型、胆汁うっ滞型、その両者の混合した型がある。(そうよう)感、黄疸、ALPやγ‐GTPなどの胆道系酵素の高値が持続する胆汁うっ滞型が従来は多かったが、減少している。診断は、経過から薬物の使用とその中止による改善を知ることや薬物アレルギーによる場合にはリンパ球培養試験による。治療は起因薬物の中止がもっとも重要である。[恩地森一]

自己免疫性肝炎

中年以上の女性に多い。慢性に経過する。原因は不明であるが、自己免疫の関与が考えられている。症状は発熱、皮疹(ひしん)、関節痛、黄疸があるが、無症状のことも多い。診断は、抗核抗体、抗平滑筋抗体の陽性、血沈亢進(こうしん)、2.0グラムを超えるガンマグロブリンとIgGの高値、肝生検で高度の肝細胞壊死と形質細胞浸潤がみられることなどによる。自己免疫性肝炎では、肝炎ウイルス、アルコールや薬物性肝障害を除外しておくことが重要である。
 治療は副腎(ふくじん)皮質ホルモンが奏効し、診断の根拠ともなる。副腎皮質ホルモンは長期使用し、半永久的な使用となる。免疫抑制剤やウルソデオキシコール酸も併用する。予後は早期に診断すれば良いが、肝硬変に進展した人や劇症肝炎で発症した人は悪い。[恩地森一]

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世界大百科事典内の肝炎の言及

【肝機能検査】より

…そこで肝細胞が障害されると,細胞内に蓄えられていたこれらの物質が血中に大量に出てくる場合もあり,肝機能検査として測定されることもある。
[肝臓疾患の原因]
 肝炎ウイルスは,アルコール,毒(薬)物と並んで肝臓疾患の三大原因といわれる。肝炎ウイルスには現在3種類以上のウイルスが推定されている。…

【肝臓】より

…ギリシア語ではhēparといい,この語幹hēpa‐が肝炎hepatitis,肝臓癌hepatomaなどに用いられている。日本では古くは肝(きも)と呼ばれ,五臓六腑の一つとされる。…

※「肝炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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