日本大百科全書(ニッポニカ) 「CSO」の意味・わかりやすい解説
CSO
しーえすおー
チーフ・ストラテジー・オフィサーchief strategy officerの略で、最高戦略責任者と訳す。アメリカ型の企業統治組織形態をとる企業における役職名である。経営戦略やグループ企業の事業戦略統括の責任者であり、加えて戦略性が従来以上に認められるM&A(企業の合併・買収)・事業開発などの部門を統括させる企業も増えている。1990年代後半からアメリカ企業で増加し、2000年(平成12)以降日本企業も採用する傾向にある。
アメリカ型企業統治組織は、取締役会(ボード)と執行役(オフィサー)の2段階になっている。両方のメンバーとなるのが、社内取締役といわれる。社内取締役には、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)が通常就任するが、必要によりCTO(最高技術責任者)、CSOなども加わる。
アメリカ企業は、経営戦略の策定・提案を外部コンサルタント会社に依頼することも多い。しかし、中長期経営計画の策定に習熟し、多数の事業を実力・実態に応じて実行させていく戦略管理に力点が置かれ始めた。CEOやCOOが、激しい経営環境と競争状況の変化に応じて重要な事項について、早くかつ的確なアドバイス・提言をタイムリーに求めるようになったためである。
日本企業では、従来から経営企画部門担当役員やグループ統括部門担当役員は設けられていた。しかし、経営計画のとりまとめや関連分野での提案が多く、経営参謀というより事務局長的位置づけの会社も多い。これでは、事業部門・グループ企業が増加した場合や、グローバルな事業展開、多様化する提携、スピードが早まる買収と合併などに有効に対応しきれない。この反省から、CEOとCOOを総合的に補佐し、CFOと協力して取り組める権限をCSOに与えることが不可欠になりつつある。今後CSOの呼称をもつ執行役・執行役員は増加していくと予測される。
[丹羽哲夫]