G8ハイリゲンダム・サミット(読み)G8はいりげんだむさみっと/じーえいとはいりげんだむさみっと(英語表記)Heiligendamm Summit of the Group of Eight

知恵蔵 の解説

G8ハイリゲンダム・サミット

2007年6月6〜8日、ドイツ・ハイリゲンダムで開かれた主要国首脳会議(G8サミット)。参加国は米、英、フランス、ドイツ、イタリア、日、カナダ、ロシアおよびEU。経済・政治討議を行い、世界経済、貿易、アフリカにおける成長の課題、核不拡散、テロ対策、スーダンでの多くの人権侵害などにつき文書を発表した。G8首脳は、その後ブラジル、中国、インド、メキシコ南アフリカの新興5カ国と協議し、またナイジェリアなどアフリカ7カ国と対話、続いて、それら12カ国に国連など6国際機関の長を加え、WTO(世界貿易機関)ドーハ・ラウンドなどにつき意見交換を行った。最大の焦点は、温室効果ガスの排出規制。京都議定書は、排出量1位の米国、2位の中国を規制していない。そこで13年以降の国際的規制について議長国ドイツのメルケル首相は、(1)地球の温度上昇を2℃以内に抑制、(2)50年までに温室効果ガス排出を半減、(3)京都議定書以降の排出規制の枠組みを09年までに決定、の合意を目指し、他のEU諸国はこれに賛同し、日本も積極的な役割を演じた。他方、米国のブッシュ大統領は、気候変動に対する自国内での関心の高まりなどから、サミット直前にこの協議への復帰を表明。その結果、議長総括では、G8は「09年までに気候変動枠組み条約の下での合意形成に貢献すること」で一致。また「50年までに半減」を「真剣に検討する」と表明した。世界の温暖化対策を前進させる一定の成果である。なお、原油高、金融危機の論議は低調。またアフリカ支援では、感染症対策費などの積み増しを決めたが不十分であり、日本などの政府開発援助(ODA)も減少しているため、アフリカ諸国首脳から不満が続出した。またG8は、経済的拡大を続けるブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカの新興5カ国との間で、知的財産権保護、投資環境、アフリカ支援、エネルギー効率などを定期協議するため、事務局をOECD内に置く、「ハイリゲンダム・プロセス(経済対話の場)」の設置で合意。その結果、「G8参加国拡大」の論議は、当面「G8+新興(アウトリーチ)5」の枠組みで対処される見通しである。なお格差のグローバル化に反対する数万といわれる市民の抗議行動があったが、厳重な警戒網により押さえ込まれた。

(遠藤誠治 成蹊大学教授 / 坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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