改訂新版 世界大百科事典 「X線顕微法」の意味・わかりやすい解説
X線顕微法 (エックスせんけんびほう)
X-ray microscopy
物質の微細な内部構造をX線を使って調べる方法。生物学,医学,金属学などの分野で使われている。
X線陰影顕微法
顕微X線法,マイクロラジオグラフィーmicroradiographyともいう。物質の透過X線写真に,試料の場所的密度差や構成物質の違いによるX線吸収率の差に対応したコントラストがつくことを利用する。電子顕微鏡ほど試料に損傷を与えず,生物を生きたままに近い状態で観察できる。(1)密着法(コンタクト法) 試料を感光材料に密着させて撮った像を電子顕微鏡などで拡大する。分解能は,おもに感材の粒子径で決まり0.2μm程度である。1977年ごろからシンクロトロン放射光からの軟X線とレジストを用い生物試料の5nmに近い微細構造を観察できるようになった。他の方法では得られない分解能で,生物学の研究に多大の寄与が期待される。(2)投影法 点状X線光源に近接して試料を置き幾何学的拡大像を得る。分解能は0.1μm程度である。
X線回折顕微法(投影法)
X線トポグラフィーともいう。結晶上の点と感光材料上の点が1対1に対応するように撮った回折写真を光学的に拡大し,濃淡分布から結晶の欠陥などの情報を得る。分解能は数μmであるが,視野が広く空気中で使える。結晶成長の基礎研究などに関連して工業的にも重要である。
X線顕微鏡
投影法用X線顕微鏡では,X線だけで拡大像を得るのは困難であるが,全反射鏡を組み合わせた光学系やフレネルゾーンプレートを用い軟X線を光源とし拡大像を得るものがいくつか試みられている。位相差顕微鏡もX線干渉計を用いて実現されている。
執筆者:中山 貫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報