位相差顕微鏡(読み)いそうさけんびきょう(英語表記)phase-contrast microscope

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

位相差顕微鏡
いそうさけんびきょう
phase-contrast microscope

物体の各部分の屈折率や厚さの違いによって透過光に生じる位相差明暗に変えて無色透明な試料を観察できるようにした顕微鏡構造としては普通の顕微鏡の集光レンズの前側焦平面に環状の絞りを入れ,対物レンズの後側焦平面に位相板を置いたものである。位相板には集光レンズの絞りに共役な部分とそうでない部分とで位相差と透過率の違いを生じるように,適当な薄膜がつけられている。集光レンズを通って物体に当った光は物体によって回折されて対物レンズの位相板上で回折スペクトルを生じる。普通の顕微鏡ではこのような回折光が対物レンズで結すると一様な明るさしか生じないが,位相差顕微鏡ではこの位相板の作用により像面で明暗のコントラストが生じて像を見ることができる。 1935年にこれを発明した F.ゼルニケはノーベル物理学賞を授与された。 (→等厚干渉 )  

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デジタル大辞泉の解説

いそうさ‐けんびきょう〔ヰサウサケンビキヤウ〕【位相差顕微鏡】

無色透明な物体の部分的な厚さや屈折率大小によって透過光に生ずる位相差を、位相板というフィルターを使って明暗の差に変えて見えるようにした顕微鏡。生きたままの細胞が染色せずに観察できる。1935年、オランダの物理学者ゼルニケが発明。

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百科事典マイペディアの解説

位相差顕微鏡【いそうさけんびきょう】

部分により屈折率の異なる無色透明な物体の構造を観察できる特殊な顕微鏡。透明体を光が透過するとき,屈折率の大小により位相の差を生じるので,これを明暗の差に変えて観察する。そのため集光器の前に環状の絞りを置き,対物レンズの後方焦点面に入射光の振幅と位相を変える位相板を置く。固定・染色せずに生きた細胞を直接観察できるので,生物学医学で威力を発揮するほか,物理学・化学・工学・鉱物学などでも用いられる。1935年ゼルニケが発明。
→関連項目顕微鏡

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栄養・生化学辞典の解説

位相差顕微鏡

 試料の部分の光の屈折率の差を利用して,光が通過するときに位相差を与え,この位相差を明暗の差に変えて観察できるようにした顕微鏡で,染色しなくても細部が観察しやすい.

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大辞林 第三版の解説

いそうさけんびきょう【位相差顕微鏡】

部分的に屈折率または厚さが違う透明な物体を透過した光に生じた位相の差を像の明暗の差にかえて、その物体の構造を観察しやすくした顕微鏡。細胞や細菌を染色せずに観察できるため、生物学・医学で広く利用される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

位相差顕微鏡
いそうさけんびきょう

物体上に微細な屈折率(または厚さ)の相違があっても、これは透過光の位相を変えるだけで目には見えないが、この位相の相違を明るさの相違に変えて観察できるようにした顕微鏡。1935年、オランダの物理学者ゼルニケによって発明された。に示すように、集光レンズCの前側焦点面に環状のスリットRを、また対物レンズLの後ろ側焦点面に、この位置にできるRの像にちょうど重なるように環状の位相板Pを置く。この位相板は環状部分を通過する光にπ/2または3π/2の位相遅れを与えるものである。物体Oを図の位置に置くと、物体の屈折率が一様な部分を通過する光は、進行方向を変えないでそのまま進み、Pの環状の位相板を通るとき前述の位相遅れを生ずる。これに対して物体上の屈折率が相違している部分を通過する光は、回折の現象でその進行方向が変えられ、位相板の環状の部分以外を通って、位相遅れを与えられることなく進む。これらの光は、Lによってつくられる物体Oの像O'の位置でいっしょになり、干渉の結果、位相の相違がこれに比例した明るさの相違に変えられる。この像は接眼レンズでさらに拡大されて観察される。π/2の位相板を用いるものでは物体上の屈折率変化が正の部分が明るく、3π/2のものでは暗く観察されるので、それぞれ正および負の位相コントラストとよばれる。
 透明な生物標本などを普通の顕微鏡で観察するためには、あらかじめ標本を染色して明るさの相違に変えておく必要があるのに対して、位相差顕微鏡では標本がそのまま用いられるのが特徴である。[田中俊一]

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精選版 日本国語大辞典の解説

いそうさ‐けんびきょう ヰサウサケンビキャウ【位相差顕微鏡】

〘名〙 無色透明な物体を見るために、物体を透過する光の位相差を明暗の差に変えた顕微鏡。主に生物学、医学、鉱物学で用いる。一九三五年、オランダのゼルニケが発明、ノーベル賞を受けた。

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化学辞典 第2版の解説

位相差顕微鏡
イソウサケンビキョウ
phase-contrast microscope

1935年,オランダのF. Zernickeが考案した光学顕微鏡の一種.普通の顕微鏡は試料による光の吸収や散乱にもとづいて像中に生じる光の強度の場所的な差を見るものであるから,透明試料表面上のわずかな凹凸や,試料中に存在する局所的な屈折率の変化を見ることができない.この目的には,試料の各部分の透過光の間に生じた位相差を明暗の差にかえて像を得るようにした位相差顕微鏡を用いる.光源Sからの光は前焦面に置いたリング状の絞りFを通り,試料Zを照射する.試料からの回折像を生じる後焦面上に幅の狭いリング状の位相板F′がある.高次の回折波は位相板の外を通過し影響されないが,0次の回折波のうち,試料の一様な部分によるものは広がりが小さいため,位相板部分を通過して位相変化と吸収による強度変化を受け,凹凸部分や局所的に屈折率変化のある部分からの回折像は広がりが大きいため,位相板部分をはみ出して通過する.したがって,この0次および高次の回折線をレンズで合成して生じる試料像Z′には,一様な部分と局所的な変化のある部分とで強度の差が現れる.これを接眼鏡Eで見るか,写真撮影する.

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世界大百科事典内の位相差顕微鏡の言及

【顕微鏡】より

…偏光顕微鏡はその後生細胞の観察にも適用され,核分裂の紡錘糸,星状糸の研究などにも効力を発揮した。 1950年代からは,直接光と回折光の波の位相のずれを明暗の差に変える位相差顕微鏡が普及し,生細胞の観察に利用され,とくに生細胞内での染色体,ミトコンドリア,ゴルジ装置などの研究に寄与した。その後さらに,位相差顕微鏡の欠点を補った微分干渉顕微鏡がつくられ,比較的厚い生材料の光学的断面の観察が可能となり,細胞の生理学的研究に用いられるようになっている。…

※「位相差顕微鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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