肛門裂創(こうもんれっそう)または裂肛ともいう。硬い糞便(ふんべん)の排出などで肛門の後壁にできることが多いが、感染症で側壁にできることもある。症状は、急性期には肛門管上皮の単なる亀裂(きれつ)で軽い排便痛と新鮮微出血程度であるが、裂肛を繰り返して慢性化すれば、創(きず)は深さを増し、創縁が肥厚して肛門潰瘍(かいよう)とよばれる状態になる。同時に皮膚側には見張りいぼとよばれる皮垂(皮膚突起)を生じ、肛門側では肛門乳頭が肥厚して肛門ポリープとよばれる状態になる。肛門乳頭とは、直腸粘膜下端部と肛門皮膚の接合部(歯状線)に一致して肛門柱の下端部が突起として認められるものをいう。これら肛門潰瘍、見張りいぼ、肥厚乳頭の三者をあわせて裂肛三徴という。この状態になると、排便時の出血、疼痛(とうつう)だけにとどまらず、排便後も引き続く強い肛門痛が数時間に及ぶこともある。強い痛みは肛門内括約筋のれん縮によるといわれ、鎮痛剤や便通調整剤、局所麻酔剤注射などで治らなければ、手術が必要となる。かつては肛門用手拡張術や潰瘍部分の切除がおもに行われたが、近年、凍結療法や肛門内括約筋側方切断術が普及しつつある。
[竹馬 浩]
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