家伝(読み)カデン

デジタル大辞泉 「家伝」の意味・読み・例文・類語

か‐でん【家伝】

その家に代々伝わってきたこと。また、そのもの。相伝。「家伝秘法
その家に代々伝えられた事柄を記した書物
[類語]伝家重代

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精選版 日本国語大辞典 「家伝」の意味・読み・例文・類語

か‐でん【家伝】

  1. 〘 名詞 〙
  2. その家に先祖代々伝わっていること。また、そのもの。また、学説などが師弟の間で伝承されること。また、その伝わっているもの。相伝。
    1. [初出の実例]「愚云、大亨和尚其人如何々々。坡云、開山直弟也。精易。大亨小師玉潭。々々小師栴望。代々伝易々家伝也云々」(出典蔭凉軒日録‐長享二年(1488)一二月一六日)
    2. 「お染へ持参の家伝の良薬」(出典:歌舞伎・お染久松色読販(1813)中幕)
    3. [その他の文献]〔陳書‐江総伝〕
  3. 相承される家の事蹟を記した書物。家に言い伝えられた事柄を編んだ書物。令制では、功績のある家々の記録式部省に集められて編集、保管されていた。〔令集解(868)〕〔謝霊運山居賦〕

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改訂新版 世界大百科事典 「家伝」の意味・わかりやすい解説

家伝 (かでん)

藤原氏祖先伝記。《藤氏家伝》ともいう。始祖〈鎌足伝〉(〈大織冠伝〉)を上巻,鎌足の孫〈武智麻呂(むちまろ)伝〉を下巻として《群書類従》に収められている。伏見宮家本には鎌足の長子〈貞慧(定恵)伝〉を付す。次子〈史(不比等)伝〉ははやく失われたとある。上巻の撰者を大師と記すが,大師は太政大臣の唐名で,武智麻呂の次子藤原仲麻呂恵美押勝)がそれに任ぜられた。彼が曾祖父顕彰のため760-761年(天平宝字4-5)ころに編纂したと推定される。上巻は《日本書紀》鎌足関係記事と類似共通点が多く,両者には共通の原史料が存在したらしい。美化誇張は多いが,鎌足の事跡を知る上で貴重な史料である。〈貞慧伝〉は短文だが,彼の唐での修学状況などがわかり好史料で,巻末の道賢作の誄(しのびごと)は,当時の誄の形を知る上に貴重である。不比等の長子武智麻呂の伝である下巻の撰者は延慶。下巻も美化した点が多いが,奈良前期の政治や文化を知る上に参考になる点が多い。〈大織冠伝〉は,東大寺宗性抄出本がある。東大寺図書館蔵。
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普及版 字通 「家伝」の読み・字形・画数・意味

【家伝】かでん

家の記録。南朝宋・謝霊運〔山居の賦〕國以て紀を載せ、家傳以て世を申(の)ぶ。以て美刺を陳(つら)ね、論以て無を覈(かんが)ふ。

字通「家」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「家伝」の意味・わかりやすい解説

家伝【かでん】

藤原氏の祖先の事蹟を記した伝記。《藤氏家伝》とも。760年―762年頃成立。〈家伝〉とは貴族の家々の家譜,系図,祖先伝承を記した書の意味だが,その中の一つである藤原氏の家伝が典型として残り,この名で呼ばれる。始祖鎌足の伝記(〈鎌足伝〉〈大織冠伝〉)を上巻とし,その孫にあたる藤原武智麻呂の〈武智麻呂伝〉を下巻とする。鎌足の長子〈貞慧伝〉を付すものもある。著者は,上巻藤原仲麻呂(恵美押勝),下巻延慶とされる。美化や誇張が多いが,奈良前期の政治文化を知る重要史料とされる。

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世界大百科事典(旧版)内の家伝の言及

【延慶】より

…生没年不詳。藤原氏《家伝》下巻〈武智麻呂伝〉の著者。《続日本紀》天平宝字2年(758)8月2日条に〈外従五位下僧延慶,形俗に異なるをもって,その爵位を辞す。…

※「家伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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