日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオカミウオ」の意味・わかりやすい解説
オオカミウオ
おおかみうお / 狼魚
Bering wolffish
[学] Anarhichas orientalis
硬骨魚綱スズキ目オオカミウオ科に属する海水魚。新潟県、茨城県以北、オホーツク海、ベーリング海、北極海にかけて分布する。体は細長く、頭は丸い。上下両あごの前端に4~6本ずつの強大な犬歯があり、奥には臼歯(きゅうし)が並ぶ。腹びれはない。成魚の体は暗青色または暗緑色で、顕著な斑紋(はんもん)がないが、若魚には数本の褐色の縞模様がある。水深100メートル以浅の岩場にすみ、貝類の堅い殻をかみ砕き、またカニ類やエビ類もかみ切って食べる。産卵期は冬で、卵径5~6ミリメートルの大形の粘着卵を産み、直径20センチメートルぐらいの卵塊をつくる。親魚はその卵塊を体で巻いて保護する。全長1メートルぐらいになる。
この魚は獰猛(どうもう)で奇怪な顔つきをしているので、水族館などでは人気がある。日本では食用としないが、ヨーロッパやアメリカでは切り身にして「ロックサーモン」と称して販売されている。アイヌ語で「チップカムイ」(神の魚)とよばれ、この魚がとれるとニシンが豊漁となるという言い伝えがある。
[尼岡邦夫]