日本大百科全書(ニッポニカ) 「お好み焼き」の意味・わかりやすい解説
お好み焼き
おこのみやき
子供のままごと遊びに通ずる遊戯料理の一種。どんどん焼き、文字(もんじ)焼き、あるいはモンジャ焼きなどともいった。火の上に鉄板を置き、コーヒーカップ大の容器に入れた小麦粉を溶いたものを、鉄板上に流して焼き、めいめいの好みにより、サクラエビやげそ(イカの足)、刻みねぎ、餡(あん)などをのせ、焼き上がるとソースや蜜(みつ)をつける。
どんどん焼きは、屋台売りがどんどんと太鼓をたたいて触れ歩いたのでこの名がある。屋台売りでは、主人が子供たちの注文を聞いて好みの具を入れて焼き上げた。今日のお好み焼きに近いものを露店で商売したのである。文字焼きは、小麦粉の溶き物で鉄板に文字や絵を描いて焼いたからで、このほうは裏町の駄菓子屋が定着した形で商売した。文字焼きの店は冬の子供の社交場でもあった。しかし定着した文字焼き屋も、「どんどん焼き」の店、お好み焼き屋とよばれていた。文字焼きが大人のお好み焼きとなり、大流行をみたのは第二次世界大戦以後で、具のほうも肉や魚などが加わり、豪華になった。そしてお好み焼きブームにのって、家庭用の器具、材料も市販された。鉄板に溶き物を流して焼く手法は江戸時代からで、「麩(ふ)の焼き」からは金鍔(きんつば)が派生した。また太鼓焼きなども、型が考案されるまでは、流し焼きの煎餅(せんべい)の上に餡をのせたものであろう。文字焼きの餡は、エビやげその具より歴史が古い。
[沢 史生]
また、駄菓子屋で子供相手に商われていた文字焼き(モンジャ焼き)は、しだいに生地の加水量を増し、お好み焼きとは形状の異なる、ペースト状の食べ物へと変化していった。月島や浅草など東京の下町を中心に、大人も対象とした多くの専門店が営業している。
[編集部]