日本大百科全書(ニッポニカ) 「サクラエビ」の意味・わかりやすい解説
サクラエビ
さくらえび / 桜蝦
sakura shrimp
[学] Sergia lucens
節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目サクラエビ科に属するエビ。相模湾(さがみわん)、駿河湾(するがわん)だけから生息が知られている種で、駿河湾で多量に漁獲されて素干しや煮干しなどにされる。体長5センチメートルくらいで、生時はほとんど透明。甲が薄く、多数の色素胞のために淡紅色を帯び、いわゆる桜色にみえる。総計155個の発光器が体側や腹面にあり、美しく発光する。頭胸甲は尾節を除いた体長の約3分の1。額角(がっかく)は三角形で短く、上縁に小さい棘(とげ)が1本ある。第2触角は体長の3.5倍に達するが、その約3分の1の部分で強く曲がり、それより先の各節には腹面に1対の軟毛があって遊泳に役だつ。第2、第3胸脚に小さいはさみをもつ。
昼間は水深300メートル以上の近底層にいるが、夜間は泳ぎ上がってくる。とくに5、6月には表層まで大群をなして浮上することがあり、海面が光雲状を呈する。ただし、夏でも月明かりの夜には浮上しない。すなわち、負の走光性が強いため、漁期の10月から翌年5月までの暗夜に操業する。産卵期は6~8月。卵は直径0.27ミリメートルほどの球形で、浮遊性。卵数は1500~2000粒で、1年で成熟し、放卵後に死ぬ。
[武田正倫]
食品
主として、素干し、煮干しにしたものが出回っているが、産地では、生きたままのものをしょうがじょうゆ、酢じょうゆで食べる。漁獲期にはゆでただけの釜あげも市場に出る。素干し、煮干しは、茶漬けにしたり、大根おろしとともに食べたり、かき揚げやお好み焼きなどの料理に利用される。彩りとして美しいので、酢の物や和(あ)え物に広く使われ、また五目ずしに混ぜるとか、炒(いた)め物に加えるなどもする。タンパク質、カルシウムに富む食品である。