懸仏(読み)かけぼとけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「懸仏」の意味・わかりやすい解説

懸仏
かけぼとけ

平安中期の神仏習合信仰から生まれた御正体(みしょうたい)(本地仏)などを表す特殊な形式の像。古くは御正体とよんだ。鏡を神社に奉納するのはごく古く、例も多い。これが寺院にも適用され、その表面に神仏像を毛彫りする鏡像(きょうぞう)が平安時代から始まっている。

 それが転化して、銅、鉄で鏡板から像まで鋳出したり、円形金属の薄板(四角やその他の形もある)を木板にかぶせ、これに鋳出の像を取り付けるものができた。まれには木板浮彫りのものもある。肩につけた金具を利用して、柱や壁にかけて礼拝した。鎌倉時代から近世初頭にかけての遺品が多数伝えられており、像以外に天蓋(てんがい)、前机華瓶(けびょう)などまで付したものもある。

[佐藤昭夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「懸仏」の意味・わかりやすい解説

懸仏
かけぼとけ

御正体 (みしょうたい) ともいう。円形板に浮彫の仏像を取付け,上方2ヵ所に釣手環をつけて吊下げるのに便利にしたもの。鋳銅の仏像を取付けたものや鏡に仏像を取付けたものなどもある。仏像は如来像,観音像のほかに梵字種子も用いられている。本地垂迹の関係から祭神本体として神社にかけたことから御正体の名称が起ったと考えられ,神社に奉納する鏡に仏像を浮彫にしたのが古い形式であるといわれている。藤原時代中頃から制作され,鎌倉時代から室町時代初期には盛行をきわめた。長野県岩殿寺の『銅版製三尊懸仏』 (建長元年銘) はその一例

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