アダムとイブの,エデンの園(楽園)からの追放をいう。旧約聖書《創世記》2~3章によると,アダムとイブは苦しみも心配もなくエデンの園に住んでいたが,蛇の誘惑に負けて知恵の木の実を食べた。神の命にそむくこの行為(原罪)のため2人は楽園を追われ,それ以来人間は苦労して働き,ついには死する運命となった。
原罪や楽園追放の場面は初期キリスト教時代から美術に表された。《ユニウス・バッススの石棺》(359以前)の浮彫には,知恵の木の実を食べて羞恥を知ったため裸の身体をかくすアダムとイブの姿が描かれている。中世以降は教会堂壁画や写本画などに,《創世記》の一連の場面が描かれた。たとえば,《グランバルの聖書》(840ころ)には,アダムの創造から天使(多くの場合,剣をもつ)によって楽園を追われて後2人が地上で暮らすまでの諸場面が描かれている。ルネサンス期の作例としては,マサッチョのブランカッチ礼拝堂(フィレンツェ)壁画とミケランジェロのシスティナ礼拝堂(バチカン)天井画(1508-12)がとくに名高い。
執筆者:浅野 和生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…イブについても聖母マリアとの対比が認められる。初期キリスト教時代にすでに,アダムの創造から楽園追放にいたる連続した場面が写本挿絵に描かれていたと想像され,9世紀以降の多くの現存作例では,次のような場面に細分化されて描かれている。まず天地創造の第6日目の〈アダムの創造〉とそれに付随した〈イブの創造〉である。…
※「楽園追放」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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