精選版 日本国語大辞典 「以前・已前」の意味・読み・例文・類語
い‐ぜん【以前・已前】
〘名〙
① (時、年齢、事件などを表わす語について) その時点を含み、それより前。また、その時点を含まないでいう場合もある。⇔以後。
※令義解(718)考課「八月卅日以前挍定」
※平家(13C前)一〇「いくさ以前より大事の御いたはりとて」 〔史記‐趙世家〕
② 現在からだいぶ隔たった過去のある時期。むかし。
※大観本謡曲・七騎落(1483頃)「以前某に心をつくさせられ候、その返報に」
③ 勅や太政官符などの公式様文書(くしきようもんじょ)において、事書(ことがき)の次の行の本文(事実書という)の書き出し部分に使われた文言。事書の内容が二か条以上にわたるときは「以前」、一か条の場合は「右」と書く習慣であった。
※三代格‐一八・養老六年(722)八月二九日「太政官符。右一十九国、承前依レ令不レ聴レ乗レ駅。〈略〉以前件状如レ前。謹以申聞」
④ 聞き手に対して、前に一度紹介した人や物事を再び述べるとき用いる。さっき。
※平家(13C前)九「以前になのっつる武蔵国住人、熊谷次郎直実、子息小次郎直家」
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人生観「換言すれば倫理以前、実践以前の大問題」
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