偏袒右肩(読み)ヘンタンウケン

デジタル大辞泉 「偏袒右肩」の意味・読み・例文・類語

へんたん‐うけん【偏×袒右肩】

仏語。僧が相手恭敬の意を表す袈裟けさの着方で、右肩を肩脱ぎにし、左肩のみを覆うこと。古代インドの王に対する礼法に由来する。
片肌脱ぎになること。
「―の湯上りに浴衣姿」〈滑・浮世風呂・前〉

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精選版 日本国語大辞典 「偏袒右肩」の意味・読み・例文・類語

へんたん‐うけん【偏袒右肩】

〘名〙 (「へんだんうけん」とも)
① 仏語。相手に対して恭敬の意を示す着衣上の礼法。袈裟(けさ)の右肩をはずして、左肩だけを覆う着方。偏袒
正法眼蔵(1231‐53)伝衣「偏袒右肩は常途の法なり」 〔無量寿経‐上〕
② 片肌脱ぎになること。
滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「偏袒右肩(ヘンダンウケン)の湯上りに浴衣容の」

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百科事典マイペディア 「偏袒右肩」の意味・わかりやすい解説

偏袒右肩【へんたんうけん】

古代インドの衣服の着方で,左肩に法衣かけ,右肩を露出する。恭敬の姿で,如来形仏像の法衣の着方に表現されている。

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世界大百科事典(旧版)内の偏袒右肩の言及

【仏像】より


[初期仏像の様式]
 初期のガンダーラ仏は,カールした長髪を頭上で束ねた肉髻(につけい),西洋人風の容貌,両肩を覆う(これを通肩(つうけん)という)厚手の衣に深く刻まれた襞(ひだ)などを特色とし,表現は具体的・現実的な傾向が強い。一方,初期のマトゥラー仏には外来の表現技法の影響は認められず,純インド的な美意識に基づき,巻貝形の肉髻,野性的な風貌,右肩を露出した(偏袒右肩(へんだんうけん)という)薄手の衣などを特色とし,観念的な理想美を追求している。クシャーナ朝時代にはガンダーラ地方とマトゥラーとで仏像製作をほぼ独占し,像容・表現ともにまったく異なっていた両者もやがて互いに影響しあい,3世紀になると頭髪を螺髪(らほつ)とするものが出現し,仏陀像の基本形ができあがった。…

※「偏袒右肩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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