無量寿経(読み)ムリョウジュキョウ

デジタル大辞泉 「無量寿経」の意味・読み・例文・類語

むりょうじゅきょう〔ムリヤウジユキヤウ〕【無量寿経】

大乗経典。2巻。魏の康僧鎧こうそうがい訳とされる。浄土教の根本聖典で、浄土三部経の一。法蔵菩薩四十八願大願を成就して阿弥陀仏となり、一切衆生を救済して極楽浄土に導くと説くもの。大無量寿経大経

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精選版 日本国語大辞典 「無量寿経」の意味・読み・例文・類語

むりょうじゅ‐きょうムリャウキャウ【無量寿経】

  1. 浄土宗および真宗の根本経典浄土三部経の一つ中国、魏の康僧鎧の訳とされてきたもの。上巻には阿彌陀の四八の願とその修行によってえられた浄土の荘厳を説き、下巻に衆生の極楽往生の相などを説く。大無量寿経。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無量寿経」の意味・わかりやすい解説

無量寿経
むりょうじゅきょう

浄土教の根本聖典。『観無量寿経』『阿弥陀(あみだ)経』とともに「浄土三部経」の一つに数えられる。『大無量寿経』ともよび、『大経』と略称する。サンスクリット原典は「スカーバティー・ビューハ」Sukhāvatī-vyūha極楽(ごくらく)の荘厳(しょうごん))といい、およそ100年ごろ北西インドで編纂(へんさん)されたと推定される。『無量寿経』はこれを三国時代の魏(ぎ)の康僧鎧(こうそうがい)が漢訳したものと伝えるが、しかし実際は東晋(とうしん)の仏駄跋陀羅(ぶっだばっだら)(覚賢(かくけん))と南朝の宋(そう)の宝雲(ほううん)が421年に共訳したものとみられる。漢訳としてはこのほかに4種の異訳があるが、中国、日本では本訳の『無量寿経』がもっともよく用いられている。漢訳のほかにチベット訳があり、またコータン語訳、ウイグル語訳、西夏(せいか)語訳の断片もある。

 本経の内容は、過去久遠(くおん)の昔、法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)が無上なる悟りを得ようと志し、生きとし生ける者を救済するための本願として四十八願をたて、途方もなく長い間修行を重ねたのち本願を完成して、いまから十劫(じっこう)というはるか以前に阿弥陀仏(無量寿仏)となり、現に西方の極楽(安楽・安養(あんにょう))という世界(浄土)に住して説法していることを述べ、ついで極楽浄土の優れたしつらい(荘厳)を詳しく描写し、この極楽への往生を願う人々を上・中・下の3種類(三輩)に分け、念仏を中心とした種々の実践法によっていずれも浄土に往生しうることを説き明かしている。全体として浄土教信仰をもっとも組織的に説いたもので、この経典によって浄土思想が確立した。とくに日本では浄土教諸宗派の所依の経典とみなされたため広く流布し、本経の注釈書、解説書等も非常に多い。

[藤田宏達]

『藤田宏達訳『梵文和訳 無量寿経・阿弥陀経』(1975・法蔵館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無量寿経」の意味・わかりやすい解説

無量寿経
むりょうじゅきょう

浄土教の根本経典の一つ (→浄土三部経 ) 。『大無量寿経』『大経』ともいう。康僧鎧訳。2巻。サンスクリット語原典 Sukhāvatīvyūhaのほかチベット語訳,漢訳も現存。漢訳は 12回翻訳され,うち5本が現存するが,それらの原典や相互関係などについては諸説がある。若干の漢訳本には中国での加筆挿入があると考えられる。本経の内容は,四十八願を成就した無量寿 (阿弥陀) 仏の修行とその果報,衆生が念仏を唱えて極楽浄土に往生することができる因果を説いている。

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改訂新版 世界大百科事典 「無量寿経」の意味・わかりやすい解説

無量寿経 (むりょうじゅきょう)

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世界大百科事典(旧版)内の無量寿経の言及

【阿弥陀】より

…弥陀とも略称される。《無量寿経》によれば,過去世に法蔵比丘が世自在王如来のもとで四十八の誓願をたて,長期間の修行を果たし,現在では阿弥陀仏となり,極楽浄土の主となって,その浄土へ往生を願う衆生を摂取するという。四十八の誓願のうち第十八願は阿弥陀仏を念ずれば極楽往生できるというもので,後世の中国,日本では称名念仏の根拠とされた。…

【浄土教】より

…ところで,《漢訳大蔵経》のなかで阿弥陀仏について説いている仏典は270余部で,大乗仏典全体の3割を占めていて,中国や日本では阿弥陀浄土の信仰が他の浄土教を圧倒して普及し,浄土教の名称を独占するかのごとき様相を呈するにいたる。この阿弥陀浄土をとくに説く浄土経典としては《般舟三昧(はんじゆざんまい)経》と《無量寿経》《阿弥陀経》《観無量寿経》のいわゆる〈浄土三部経〉がある。道安の弟子である東晋の慧遠(えおん)は,廬山の東林寺で僧俗123名と念仏結社,いわゆる白蓮社(びやくれんしや)の誓約をしたことで知られ,中国では慧遠を浄土宗(蓮社)の始祖と仰いでいる。…

【大無量寿経】より

…大乗仏典の一つ。《無量寿経》《大経》とも呼ばれる。浄土教の根本聖典の一つで,《観無量寿経》《阿弥陀経》とともに〈浄土三部経〉を形成する。…

【来迎図】より

…また絵画として表現されるもののほかに彫像によって表現される来迎像もある。来迎図の教理的根拠は《無量寿経》所説の阿弥陀仏の四十八願中の第十九願において,大衆を救済するために臨終まぎわの往生者のもとに阿弥陀仏が諸尊を従えて来迎するという誓約にもとづくものであるが,さらに《観無量寿経》ではこれをいっそう発展させ,大衆の機根に応じて上品上生より下品下生にいたる九品(9通り)の往生すなわち来迎のあり方を説いている。このような経意にもとづいて表現されたのが阿弥陀来迎図であり,まず《観無量寿経》にもとづいて描かれた〈観無量寿経変〉(略して観経変と言う)の中に表された。…

※「無量寿経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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