果無・果敢無・儚(読み)はかない

精選版 日本国語大辞典 「果無・果敢無・儚」の意味・読み・例文・類語

はか‐な・い【果無・果敢無・儚】

〘形口〙 はかな・し 〘形ク〙
① 思い通りにいかない。順調でない。期待はずれだ。
※竹取(9C末‐10C初)「御輿を寄せ給ふに、此かぐや姫きと影に成ぬ。はかなく口惜しと思して」
② しっかりしたところがなくて、頼りにならない。頼りない。心細い
※伊勢物語(10C前)六二「心賢くやあらざりけん、はかなき人のことにつきて」
束の間である。あっけない。
古今(905‐914)恋二・五七五「はかなくて夢にも人を見つる夜はあしたの床ぞ起き憂かりける〈素性〉」
源氏(1001‐14頃)宿木「はかなく暮ぬれば、その夜はとまり給ぬ」
④ あっけなくむなしい。無常である。
(イ) 世の中や人生についていう。
※古今(905‐914)哀傷・八三五「ぬるがうちに見るをのみやは夢といはんはかなき世をもうつつとは見ず〈壬生忠岑〉」
(ロ) 特に、人の死についていう。→はかなくなる
※源氏(1001‐14頃)夕顔「あはれと思ひし人のはかなきさまになりにたるを」
(ハ) 見た目にむなしく痛々しい。あわれだ。気の毒だ。
※古今(905‐914)恋五・七五九「山代の淀の若薦かりにだに来ぬ人頼む我ぞはかなき〈よみ人しらず〉」
⑤ 目立たない。表立たない。しのびやかだ。
※源氏(1001‐14頃)常夏「さるべき折々に、はかなくうち忍び、物をも聞えて慰みなむや」
⑥ さして重要ではない。表向きでない。力のない。かりそめである。
蜻蛉(974頃)上「はかなき祓へなれば、程なう帰りたてるに」
粗略である。みすぼらしい。卑しい。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「衣、はた、はかなき単衣の萎えたるを着たるに、顔かたちはただ光るやうに見ゆ」
思慮分別が十分でない。
(イ) 幼稚である。あどけない。
※源氏(1001‐14頃)若紫「いとはかなう物し給ふこそ、あはれにうしろめたけれ」
(ロ) 浅はかである。愚かだ。無能だ。
※源氏(1001‐14頃)乙女「はかなき親に賢き子の、まさるためしは、いと難き事になむ侍れば」
[補注]「はかない」の「はか」は「はか(計)」で、「あとはか」「はかる(計量)」「はかどる(捗)」「はかがゆく」などの「はか」と同根。形容詞「はかばかしい」と対応する語。
はかな‐げ
〘形動〙
はかな‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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