物性化学(読み)ぶっせいかがく

改訂新版 世界大百科事典 「物性化学」の意味・わかりやすい解説

物性化学 (ぶっせいかがく)

化学は物質の構造,物性,反応を探究する学問分野である。このうち,とくに物性研究に焦点を合わせて研究する化学の一分野をいう。物性とは,気体液体固体を問わず,物質の物理的性質を意味するが,とくに固体,液体の凝縮系についての物理的性質を取り扱う場合に,物性化学と呼ぶ場合が多い。これら物理的性質としては,電気伝導度,電荷の移動,電子の実効質量などの電気的性質,物質による光の吸収,発光反射などの光学的性質,強磁性反磁性などの磁気的性質(磁性),機械的強度粘弾性などの力学的性質,比熱,熱伝導などの熱的性質,さらに誘電率,誘電損失などの誘電的性質などが,その代表的なものである。しかし,実際に凝縮系の物性を探究する場合,これらの諸性質を2種以上併せて測定することによって,その本質の解明に迫ることができる場合が多い。電気的性質と光学的性質を併せ持った光電特性(光伝導,外部光電効果)や,磁気的性質と光学的性質の組合せである核磁気共鳴吸収や常磁性共鳴吸収は,その代表例の一つである。

 物性化学が物性物理学と異なる点は,物性測定の対象となる物質に焦点を置き,その多様性にも着目する点である。したがって,物性化学においては,物質の精製,不純物の添加とか不完全性の導入などの試料調整,さらに単結晶作成も重要な研究対象である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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