弾性的特性と粘性的特性を合わせもつ力学的特性.通常の弾性体では,あるひずみを与えると一義的に一定の応力が定まり,粘性流体ではあるひずみ速度に対して一義的に応力が定まる.しかし,ある種の系,とくに高分子を含む系ではこのどちらでも表せない応力-ひずみ関係をもつ.たとえば,一定のひずみを与えていても応力が経時的に減少(応力緩和)したり,一定の応力を与えてもひずみが増していく(クリープ)ことがある.応力緩和特性を表すモデルとして,マクスウェル模型があり,クリープ特性を表すフォークト模型がある.また,定常流動後,ひずみを止めても応力がただちには0にならず,徐々に応力が減少していく現象がみられる.これらは典型的な粘弾性現象である.ひずみと応力との間の関係式が線形であるとき線形粘弾性という.微小なひずみ(応力)では線形性が成り立ち,現象論的解析法が確立されている.一方,ゴムなどの大変形,非ニュートン流動,法線応力効果などは非線形粘弾性である.応力-ひずみをテンソル量とした扱いが,とくに非線形粘弾性現象の解析を中心に展開されている.粘弾性の研究はレオロジーの主要な分野であるとともに,線形粘弾性は分子運動解明の手段としても用いられている.[別用語参照]複素弾性率
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
高分子物質などで見られる弾性と粘性とが組み合わさった性質。たとえば高分子物質の場合,急激に力を加えると弾性を示すが,そのまま力をかけ続けると変形が進行し続けたり,変形を一定に保って置くと応力が時間とともに減少する現象が見られる。また一般の液体は粘性を示すだけでずれの変形に対しては弾性を示さないが,高分子のゲルや溶液ではずれの弾性も示す。これらの現象が粘弾性の典型例であるが,このようなふるまいは,物質が変形するのに一定の時間を要することによるとして理解されており,この時間を緩和時間と呼ぶ。すなわち,緩和時間より速い外力に対しては弾性的な性質を示し,ゆっくりした外力に対しては粘性的な性質を示すのである。緩和時間は,一般に,温度が高くなると短くなるので,同じ速さの外力の変化に対しても低温では弾性的,高温では粘性的なふるまいを示す。
→緩和現象 →レオロジー
執筆者:二宮 敏行
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力学的属性として、固体的な弾性変形と液体的な粘性流動とを同時に示す物質を粘弾性物質といい、この性質が粘弾性である。高分子物質、コロイド溶液・金属などに広くみられる。たとえば卵白は粘性とともに、小さな外力に対しては弾性を示す。液体においてずれ弾性が観察される可能性について、19世紀においてすでにマクスウェルが指摘した。20世紀高分子科学の成立とともに、緩和時間分布の考え方を基礎とした粘弾性理論が体系化され、とくに、現象論的線形粘弾性理論は1950年代なかばまでに完成された。高分子物理学の一分野としてのミクロの粘弾性理論は、今日なお発展しつつある。
[荒川 泓]
…これがレオロジーのおもな対象となる。塑性弾性粘性
[粘弾性]
粘弾性は弾性変形と流動とが組み合わさって起こる挙動で,種々の物質においてみられるが,高分子物質の場合にもっとも多くの例がある。例えば高分子物質の固体に一定の力を加えて引っ張ると,瞬間的に伸びが起こる。…
※「粘弾性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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