田峯の田楽(読み)だみねのでんがく

改訂新版 世界大百科事典 「田峯の田楽」の意味・わかりやすい解説

田峯の田楽 (だみねのでんがく)

民俗芸能。愛知県北設楽(きたしたら)郡設楽町田峯の高勝(こうしよう)寺観音堂で行われる田楽で,例年2月11日の昼から深夜にわたって行われる。本来は修正会(しゆしようえ)の行事で,1968年までは陰暦1月17日から18日朝まで行われていた。昼田楽,夜田楽,朝田楽からなり,祭りに奉仕する諸役はほぼ世襲制である。禰宜(ねぎ),羽織,先払(さいらい),鳥追(各1人)を中心に四天田(4人),小田楽(10人)その他からなる。昼田楽は午後3時ころから始まり,観音堂内陣で《扇の舞》《仏の舞》《万歳楽》を演じ,次に額堂で以上の舞のほか《膳の舞》《湯桶の舞》など神楽風の舞を舞う。夜田楽は午後7時ころから始まり,内陣で羽織と鳥追が中心の田遊(たあそび)を演じる。水見・田打ち・代ならし・籾(もみ)まき・苗取り・田植などのようすを模擬的に午後11時近くまで演じる。夜田楽が終わるとすぐ装束を変えて庭に出,朝田楽になるが,朝田楽は呪師(しゆし)芸(呪師),田楽,猿楽諸芸を取り込んだもので,《棒》(腰に宝物と称する男根を吊した天狗),《太刀扇》(火伏せ),《四天殿》(田楽躍)や,《から輪田楽》《殿面の舞》《女郎面の舞》《翁》などを舞う。行事が終了するのは午前1時過ぎになる。由来は明らかでないが,1559年(永禄2)隣村の道具津薬師堂から高勝寺へ伝えたという記録が残る。国指定重要無形民俗文化財。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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