仏教行事における僧侶の役名。旧年の罪障を懺悔(ざんげ)して穢れを払い,当年の安穏豊楽を祈願する古代からの伝統行事に悔過会(けかえ)がある。呪師はその悔過会において重要な位置を占める役柄で,密教的な局面あるいは神道的な局面などを宰領する。すなわち,法会の場への魔障の侵入を防ぎ,護法善神を勧請(かんじよう)して,法会の円満成就のための修法を行う。たとえば,悔過会の代表例にあたる東大寺修二会(しゆにえ)(通称,御水取)では,4種の重要な役割が設けられており,通常,上席から和上(わじよう),大導師(だいどうし),呪師,堂司(どうつかさ)と称する。和上は戒律を専門とし,大導師は法要全体を統括し,堂司は庶務や対外折衝にあたる。呪師は,目に見えない魔障や善神に対処する役割を持つので,その挙措動作や声量も迫力を要し,気力を欠くことができない。東大寺修二会では,連日の呪禁(じゆごん)作法に派手な所作や声高の声明(しようみよう)で活躍するが,〈水取り〉〈走り〉〈達陀(だつたん)〉などが行われる特別の日には,その行事を指揮する。悔過系の行事における呪師の役割は,いずれの場合もほぼ共通しているが,法隆寺西円堂の修二会など,節分の鬼追いに関わる行事では,鬼に魂を吹きこむ役を兼ねることもある。11世紀半ばごろには寺院に属して法会の余興を務めていた猿楽者の一部が,呪師の所作を代行するようになった。これを呪師猿楽といい,13世紀ごろまで観賞芸能として貴族層に受け入れられた。今日の《式三番》には〈呪師走り〉の名が残されている。
執筆者:高橋 美都
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「しゅし」「すし」「ずし」ともいう。僧侶(そうりょ)の勤める仏教上の呪師と、猿楽(さるがく)者の勤める呪師とがある。前者は法呪師といわれ、修正会(しゅしょうえ)・修二会(しゅにえ)において道場の結界(けっかい)や香水・護摩などの密教的行法(ぎょうぼう)をつかさどる。この法呪師の行法の威力を一般参詣(さんけい)人に対して具体的に演技化して示したのが呪師猿楽である。呪師の演技は「走り手」とよばれ、その曲は一手、二手と数えられる。10余手あったが、今日知られている曲には剣手、武者手、大唐文殊手、とりばみなどがある。呪師は寺院に属し貴族の庇護(ひご)を受け、華美な装束に兜(かぶと)をつけて、鼓の囃子(はやし)で鈴を振りながら舞った。平安時代には華やかであった呪師も、鎌倉時代に入ると漸次衰運の道をたどるようになった。
[高山 茂]
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…平安時代,寺院に属し,法会の際に呪師の役を代行した猿楽。東大寺,興福寺等の大寺では,春を迎え,新しい年の太平を祈る修正会(しゆしようえ),修二会(しゆにえ)の勤行の際,法呪師(呪師)と呼ぶ役僧が,仏法守護の神々を勧請して,結界,鎮壇,鎮魔,除魔等の密教的な行法を受け持った。…
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[寺事と法要]
寺事の中核となる法要は,何曲かの声明(しようみよう)と,特定の修法(しゆほう)や読経などを組み合わせて構成されている。その組合せ方によって種々の意義を表明しうるわけであり,これに礼拝や行道(ぎようどう),呪法(呪師)などの所作を加えて,より意義を鮮明にし,儀礼としてのかたちを整えている。数多くの法要形式の中には,8世紀にすでに完成していたものもあり,現代の制作になる新しい法要形式もある。…
※「呪師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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