黄金の暁教団(読み)おうごんのあかつききょうだん(英語表記)Hermetic Order of the Golden Dawn

改訂新版 世界大百科事典 「黄金の暁教団」の意味・わかりやすい解説

黄金の暁教団 (おうごんのあかつききょうだん)
Hermetic Order of the Golden Dawn

19世紀末イギリスに成立したオカルティズム教団。合理論の世紀に闇の勢力として根を張った近代的魔術結社の代表例だが,同時代に活動した神智学協会が東洋の秘教を重視したのに対し,カバラをはじめとする西洋秘儀フリーメーソンの組織形式を援用した。その行動目標は大英博物館などに眠っている古代密儀のテキストを解読し,西洋の秘儀を復活させることにあった。1888年3月1日,魔術研究家ウェストコットW.W.Westcott,メーザーズS.L.M.MathersおよびウッドマンW.R.Woodmanにより創設されたが,その際一種の権威付けとして,同教団はドイツに存在する〈秘密の首領〉の指示を受けて活動するという形式を強調した。しかし参入者の中には〈秘密の首領〉を実際に探しだそうと試みる者も出,一時はR.シュタイナーがその首領と誤認されたこともある。初期の参入者にはミナ・ベルグソン(哲学者ベルグソンの妹,後のメーザーズ夫人),O.ワイルド夫人,W.B.イェーツらがいる。その後教団はメーザーズの指導体制の下で100名を超える結社に成長したが,98年にクローリーの入会を契機として内紛状態を迎え,メーザーズが追放される事態にまで至った1900-03年にかけて,教団は秘儀の公開や覇権争いの問題に決着をつけるべく〈暁の星教団〉〈聖黄金の暁教団〉〈A∴O∴〉の3分派に分裂した。その間,西洋オカルティズムの本道である儀式魔術を守るという目標は,主としてメーザーズによる古代の魔術文書の英訳作業として成果を見,その研鑽は現在も〈O∴T∴O(東方騎士団)〉や〈O∴C∴S(立方石教団)〉ほか直系・傍系の各結社により継続されている。
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デジタル大辞泉プラス 「黄金の暁教団」の解説

黄金の暁教団

19世紀イギリスに存在したオカルト的宗教結社「黄金の夜明け団」の日本語での別称

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世界大百科事典(旧版)内の黄金の暁教団の言及

【オカルティズム】より

…レビやパピュスの理論は,ユイスマンス,M.バレス,ペラダンのような文学者をはじめ,〈薔薇十字団サロン展〉に参加した画家たち(ゴーギャン,G.モロー,ナビ派など)をも魅了し,フランス象徴主義に文学的芸術的表現を見いだした。イギリスではW.W.ウェストコットがオカルト結社〈黄金の暁教団〉を組織し,D.フォーチュン,クローリー,S.L.M.メーザーズのような魔術師を傘下から生み出し,また詩人W.B.イェーツに霊感を与えた。一方,ブラバツキー夫人の神智学協会から分離したシュタイナーは,ドイツ・オーストリアを中心に人智学協会を創立,20世紀オカルティズムの一大潮流を形成した。…

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