改訂新版 世界大百科事典 「アカセセリ」の意味・わかりやすい解説
アカセセリ
Hesperia florinda
鱗翅目セセリチョウ科の昆虫。中型のセセリチョウで,開張3~3.5cm。翅の黄色い地色がやや赤みを帯びることからこの名がある。シベリアのバイカル地方から中国北部,アムール地方,サハリン,朝鮮半島を経て日本にかけて分布し,日本では本州中部の内陸部の山地のみに見られる。日当りのよい山地草原に生息し,年1回7月下旬から8月中旬にかけて羽化する。飛び方はきわめて敏速で,好んでカセンソウ,マツムシソウ,ウツボグサなどの花に集まる。雄は草本の花上や葉上にとまり,周囲になわばりをつくり,他の個体を激しく追跡する。卵で越冬し,孵化(ふか)した幼虫は食草のヒカゲスゲ(カヤツリグサ科)の根もとに簡単な巣をつくってその中に潜み,ここから出かけて食草の葉を食べる。その際,数枚の細い葉を根もとからバリカンで刈ったような食痕を残す。コキマダラセセリOchlodes venataは開張2.7~4cm。外見上アカセセリと似ているが,本種と混生するところでは一般にアカセセリよりも約1~2週間羽化期が早い。
執筆者:高橋 真弓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報